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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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【大気特論】低温腐食と高温腐食



 燃焼排ガス中の二酸化硫黄(SO2)は通常0.2%以下でありますが、この中の1~5%が三酸化硫黄(SO3)になります。重油燃焼ガスでは2~5%、微粉炭燃焼がすでは1~2%程度SO3が含まれているといわれています。
 SO3は水蒸気と反応して硫酸を生成し、ガス状の硫酸が液体硫酸となる温度(酸露点)を高くします。これは燃料中の硫黄分、過剰空気、水蒸気量、燃焼方法によって異なりますが、最高160℃くらいまで上昇することがあります。燃焼ガスの温度が酸露点に達すると硫酸が凝縮しはじめ、酸露点以下15~40℃で凝縮量は最大となり腐食量も最大となります。
 燃焼排ガス出口温度の低い発電用ボイラー、あるいは種々の熱設備の熱交換器内のガスの流れが一定でないと、局部的にガス温度が酸露点以下になって伝熱面を腐食します。これが低温腐食です。
 一方、重油中に含まれるバナジウム、ナトリウムなどの金属化合物が腐食性成分として灰分中に残留し、これが過熱器、再熱器などの高温伝熱器に付着、堆積して腐食を生じる現象を高温腐食といいます。重油中のバナジウム、ナトリウム、カリウム、ケイ素、アルミニウム、ニッケルなどは金属化合物として灰分中に残留し、特にバナジウムを多く含む灰は高温伝熱面に溶融状態で付着します。
 伝熱面の表面は、その母材金属の酸化皮膜で覆われていて、酸化の進行を防いでいますが、この上に付着したバナジウムなどを含む灰が融剤となって酸化槽を溶かし腐食が進行します。また、ナトリウムが存在すると硫黄酸化物と結合して硫酸ナトリウムを生成し、これにより五酸化バナジウムの腐食作用がさらに促進されます。このような高温腐食をバナジウムアタックといいます。
 低温腐食と高温腐食の防止対策は表のとおりです。
 重油焚きの火力発電設備では、石炭のようにガス中にSO3を中和するフライアッシュが存在しないため、温度が低い領域ではSO3がミスト化し、機器の低温腐食の原因となります。これを防止するため、乾式または湿式の対策がとられています。乾式処理の対策としては、アンモニア(NH3)ガスを煙道内に注入し、硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)(硫安)として固形化させ、電気集じん装置で捕集する方式が一般化しています。湿式処理としては、エアヒーター以降の運転温度を酸露点以上に高く維持して硫酸による低温腐食ゾーンを回避し、湿式脱硫装置でばいじん除去と脱硫を同時に行う方式があります。この場合、ガス中のSO3は微細なミストとなり脱硫設備を通り抜けるため、後に湿式電気集じん装置を設置しているケースが多いです。

表.低温腐食と高温腐食の防止対策
防止対策
低温腐食①硫黄分の少ない燃料を使用する。
②空気予熱器やエコノマイザー(節炭器)の表面温度を酸露点以上に保つ。
③空気入口にバッフルを付けて、熱交換器内のガスの流れを一様にする。
④燃焼ガス内のSO3を吸収あるいは化学的に中和するため、粉末状の酸化マグネ
 シウム、ドロマイト、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛などを二次空気に混ぜて燃
 焼室内に吹き込む、これらは、燃焼ガス中のSO3を吸収、あるいは化学的に中
 和する。
⑤重油に対して約0.06%(質量)のアンモニアあるいは約0.04%の複素環式アミ
 ンを燃焼ガスに添加すると腐食を少なくすることができる。
⑥できるだけ理論空気量に近い空気量で完全燃焼させ、排ガス中の酸素濃度を下
 げてSO2からSO3になる量を低減すると硫酸の生成量を少なくできる。発電
 所のボイラーのような大型のもので実施されている。
高温腐食①高温部の過熱器、再熱器の伝熱面の表面温度を下げるよう伝熱面の配置を考慮
 する。
②付着物をできるだけ落とすようスートブロワーを適切に配置する。
③ドロマイトなどの添加剤の注入により灰の融点上昇を図り、高温部での灰付着
 を少なくする。
④バナジウム、ナトリウムの少ない重油を使用する。
⑤定期点検などを利用し、スケールの除去を行う。

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【大気特論】すすの発生とその防止



 種々の燃料の燃焼が完了した後に残る炭素粒子をすすといいます。燃焼過程の火炎中に炭素粒子が生成しないときは出ないので、すすの発生は燃焼過程にあるとみられています。炎の中で生成した炭素とすすは、ほとんど同一の性質のものと考えてよいでしょう。気相炭化水素の燃焼による炎の中では炭素は単独に分離していて、火炎末端から凝集して大きなすすとなります。火炎中の炭素はほぼ球状でありますが、炎の先端近くか試料採取後にはこれらが集まってひも状になることがあります。
 炭素の大きさは1~100nmくらいで、その構造は燃料の種類や燃焼条件によって異なります。炭素粒子は質量割合で1~6%程度の水素を含みます。すすの生成機構は現在のところ十分に解明されていませんが、炭化水素燃料の燃焼過程で、脱水素や分解と同時に重合や芳香族環の生成などにより次第に炭素分の多い物質ができ、最後に炭素が生成されると考えられています。このような現象を凝縮といいます。すなわち、主に脱水素と凝縮とが炭素生成の原因となりますが、どちらが先に進行するのか、あるいは同時に進行するのかについては議論が分かれています。
 炭素またはすすの生成には燃料の性質が大きく影響し、一般的には次のことが挙げられます。
 ①燃料の炭素と水素の比(C/H)が大きいものほど、すすが発生しやすい。
 ②-C-C-の炭素結合を切断するよりも、脱水素の容易な燃料の方がすすが発生しやすい。
 ③脱水素、重合および環状化(芳香族生成)などの反応が起こりやすい炭化水素ほどすすが生成
  しやすい。
 すす発生の難易は表1のとおりになります。天然ガスやLPGは最も少なく、タールは最もすすを発生しやすいです。ただし、すすの発生は燃焼方法にも関係しますので、これは絶対的なものではありません。ガス燃焼、油燃焼、石炭燃焼におけるすすの発生の特徴は表2のとおりです。
 燃料の燃焼によって発生したすすが核となって、燃料中の硫黄から燃焼により生成した硫酸を吸着して燃焼ガスの露点温度付近で雪状に成長したものをスノースマットまたはアシッドスマット、スノーヒュームといいます。スノースマットの化学組成は炭素分20~30%、硫酸分10~40%、灰分10~30%であり、粒子径は比較的大きく肉眼でも認めることができます。ダクトで生成したスノースマットは大きな塊状に成長するものがあり、煙突から排出された場合、質量が大きいため煙突の周辺に落下して被害を与えます。

表1.燃料の種類とすす生成の難易
順位燃料順位燃料
1天然ガス7コークス
2LPG8亜炭
3油ガス9低揮発分瀝青炭
4石炭ガス10重油
5灯油11高揮発分瀝青炭
6軽質燃料油12タール
※順位が下がるほど、すすが発生しやすい。

表2.燃料によるすす発生の特徴
燃料特徴
ガス燃焼▽気相の炭化水素はすすの生成量が最も少ない。
▽予混合燃焼では火炎面の温度がかなり高く、ほとんど炭素が生成されない
 ため、不輝炎になる。
▽拡散燃焼では拡散炎の酸化速度が空気の拡散によって制限されるため炎の
 中に炭素が生成されやすく、すすも発生しやすい。
▽予混合燃焼でも拡散燃焼でも、過剰空気が10%程度あれば燃焼室内でほと
 んど完全燃焼できるのですすを発生することはない。
油燃焼▽油燃焼はガス燃焼の拡散燃焼に似ていて、空気の拡散速度が大きければ燃
 焼後にすすが残ることは少ない。
▽重油の噴霧燃焼では、油滴が蒸発した後にコークスが残る。これをセノス
 フェアといい、気相反応によって生成される炭素よりもはるかに大きい。
▽ボイラーは始動時には燃焼室内の温度が低いのですすが発生しやすい。ま
 た、燃焼室内で炎が低温の水冷壁に当たって急冷されたり、噴霧油滴が壁面
 に付着してすす発生の原因となる。
石炭燃焼▽微粉炭燃焼は大型設備に多く、管理が行き届いているのですすはほとんど
 発生しない。
▽ストーカー燃焼の場合、空気比は高いが、可燃物と空気の混合が十分でな
 いとき、部分的に空気不足のところですすが発生する。

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【大気特論】石炭燃焼とその装置




 石炭の燃焼方法はガス流速により、固定相燃焼、流動層燃焼、微粉炭燃焼の三つに大別されます。流動層燃焼はさらに気泡(バブリング)流動層燃焼と循環流動層燃焼に区分されます。
 固定相燃焼を代表するストーカーボイラー小規模の産業用ボイラーとして使われてきましたが、熱効率が悪く、最近は流動層燃焼ボイラーなどに置き換えられてきています。ストーカー燃焼装置は直径30mm程度までの石炭を機械的に連続して火格子上に供給して燃焼させ、灰の取り出しも連続的に行うことができる燃焼装置になります。ストーカー燃焼は、燃焼用空気を通過させる多数の隙間を持つ鋳物製などの火格子の上に固体燃料を支持し、固体炭素の表面燃焼を行い、揮発分および固定炭素の不完全燃焼で生成した一酸化炭素などを燃焼室を上昇する間に空間燃焼させる方式です。燃焼用空気は、火格子の下から一次空気を、燃焼室の適当な箇所から二次空気を送る構造となっています。燃料を火格子上で燃焼している火層の上に供給する上込め式、火層の下に押し込む方式を下込め式といいます。ストーカーの種類には散布式(スプレッダー)式ストーカー、移床式ストーカー、階段ストーカー、下込めストーカーおよび振動ストーカーがありますが、近年設置されるストーカーのほとんどは散布式ストーカーになります。
 流動層燃焼ボイラーは広範囲な炭種への燃焼適応性、低公害性などが注目され、第一次石油危機を契機に技術開発されました。当初は、気泡流動層燃焼ボイラーが普及しましたが、その後、燃焼効率、脱硫率などの面で優れている循環流動層燃焼ボイラーへと移行しました。
 流動層燃焼ボイラーは、固体粒子を多孔板上に置き、下から加圧された空気を吹き上げて粒子層を流動化させ、固体粒子を浮遊懸濁状態にして燃焼を行います。気泡流動層燃焼ボイラーで、流動層内に伝熱管を配置することで熱回収するとともに、800~900℃の低温燃焼でサーマルNOxの発生を抑制できます。循環流動層燃焼ボイラーは、高ガス流速域で操作し、粒子を強制的に循環させることで燃焼効率を上げます。そのため、高速サイクロンなどが付設されています。
 微粉炭燃焼は石炭を粉砕して極めて微細な粒子として燃焼室内に吹き込んで燃焼させるもので、ガス燃焼や油燃焼に近いです。微粉炭ボイラーは、微粉炭機や集じん装置、排煙脱硫・脱硝装置などの付帯設備が大きく、維持費もかかるという欠点もありますが、大形になると高い燃焼効率や負荷変動に対する追従の容易さなどの長所がこれらの短所を補うことから発電用ボイラーなど大形ボイラーの主流となっています。

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