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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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水性常乾2液塗料



《イソシアネート架橋水性塗料》

 イソシアネート架橋2液工業用塗料は、日本ではあまり歓迎されてきませんでしたが、最近の省エネルギー指向と耐酸性雨性の必要からようやく本格的に始まろうとしています。一挙に水性2液塗料にまで進むことができれば環境に対する貢献は大きいです。
 イソシアネート架橋水性塗料についての報告は多く、最近の研究は、被塗材の影響あるいは添加材効果など実用化に必要な項目、実際の使用に沿った試験、新しい重合方法を使った経済的な合成方法に及んでいます。また、水との接触によるイソシアネートの劣化を防ぐために、そう転換直前の溶液に硬化剤を加えよく混合したのち少量の水を加え撹拌し、エマルション化する方法が報告されています。この場合には、硬化剤の親水化処理は必要なく、耐水性の改善も期待できます。しかし、可使時間を明確にする手段は見つかっていません。

《エポキシ架橋水性塗料》

 2液エポキシ樹脂塗料は防錆下塗りを中心に広く使用されています。防錆塗料に必要な酸素透過阻止能に優れるエポキシ樹脂は、水性防錆塗料用としても必須の樹脂であります。しかし、エポキシ樹脂は、樹脂が親油性であること、エポキシ基とカルボキシル基は反応するために親水基として使えずノニオン界面活性剤のみで分散しなければならないために微粒子にすることが難しいのです。粒子径が大きいと架橋剤を均一に塗膜中に分布させることが困難になります。水溶性で樹脂との相溶性に欠ける架橋剤よりも分散タイプで樹脂との相溶性に優れる方が均一に混ざりやすく、塗膜性能に良い結果を与えます。また、分散タイプの架橋剤は系全体のゲル化を起こすためにポットライフも明瞭になり興味深いところです。

《シラノール架橋水性塗料》

 溶剤型塗料ではアルコキシシリル基と湿気の反応で発生したシラノール基の縮合あるいは逆に発生した水酸基とイソシアネートの反応を利用した常乾1液塗料があります。この架橋系の特徴は結合が単純で着色・毒性の危険がなく、耐候性などのデータが豊富なことであります。
 水性塗料では加水分解することなくアルコキシシリル基を樹脂に導入することが困難で現在はあまり利用されていませんが、様々なアルコキシシリル基をもった化合物が市販されるようになり、ラテックスへの後添加による導入技術も開発されていることから今後多く使われるようになるものと考えられます。
 最近では、反応性の高いメチル基より反応性の劣る分子量の高いアルキル基のアルコキシシリル基を樹脂に導入し、使用時に触媒を加えて活性化する2液タイプが検討されています。導入の方法も単にアルコキシシリル基を持つモノマーの共重合ではなく、エマルション及びラテックス合成後にエポキシ基とアルコキシシリル基を持った架橋剤を添加する方法も報告されています。メチル基以外のアルキル基を持ったアルコキシシリル基の反応は遅くエマルション及びラテックスの粒子融合が十分に行われた後、空気中の湿気とゆっくり反応して架橋するので高性能が期待できます。

《カルボジミド架橋水性塗料》

 カルボジミド基はカルボキシル基と反応するので、カルボキシル基含有ラテックスを架橋するのに適しています。常温架橋から140℃加熱架橋まで反応性の異なる架橋剤が市販されています。架橋の進行はラテックスの融合を阻止するので、融合が十分に起こった後に架橋する方が塗膜性能はよくなると考えられています。種々の反応速度を持ったジミド架橋剤で架橋したカルボキシル基含有ラテックスの塗膜性能を調べ、反応速度の遅い架橋剤で架橋した塗膜の性能がよいことを確認しています。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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ジンクリッチペイント(zinc rich paint)



金属亜鉛末を80~90mass%配合した塗料のことをいいます。防錆機構は、亜鉛末による犠牲陽極作用、および、亜鉛と外来腐食因子や炭酸ガスなどとの反応によって生ずる塩基性析出塩(塩基性塩化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛など)の封孔作用や、皮膜形成による遮断作用が考えられます。従って、塗膜の損傷で鋼面が露出してもさびが広がりにくいのです。亜鉛末は溶融亜鉛を噴霧冷却して製造され、通常1~10ミクロン程度の球状粒子になります。
 使われ方は樹脂などにより、下表のように分類されます。

表.ジンクリッチペイントの分類
用途別ジンクリッチプライマー(一時防錆プライマー)
厚膜形ジンクリッチペイント
樹脂別有機質ジンクリッチペイント・・・エポキシ樹脂系など
無機質ジンクリッチペイント・・・エチルシリケート系、
              アルカリ(Na、K)シリケート系など
硬化
形式別
ポストキュアー形・・・アルカリシリケート系でのリン酸溶液硬化処理など
セルフキュアー形・・・自然放置乾燥のもの。湿気硬化反応などによる
亜鉛
濃度別
ジンクリッチプライマー・・・塗膜に亜鉛を80~90mass%含み、防食性に特色
低濃度ジンクプライマー・・・上記より亜鉛含有量が低いもの。溶断溶接性に特色
 一時防錆プライマーは、ショッププライマーとも呼ばれ、ブラスト処理した鋼厚板や形鋼に10~20μmの膜厚に塗装されます。構造体やブロックを建造するまでの一時防錆プライマーについてはジンクリッチプライマーの名称でジンクリッチペイントとは区別されます。樹脂は有機質、無機質ともに使用され、一般に没水部は有機系が、大気部は無機系が優れていると言われますが、どちらにも共用しているケースが多いです。
 低濃度無機質ジンクプライマーも普及し、新無機ショッププライマーとも呼ばれています。これは塗料中に亜鉛以外の顔料を併用して一時防錆の目的を満たしながら、溶断溶接性を向上させ、建造作業環境中に発生する亜鉛ヒューム量が削減できるもので、造船業界で普及しています。
 厚膜形ジンクリッチペイントは、亜鉛末、無機質のアルキルシリケート系または有機質のエポキシ樹脂やアルキッド樹脂、および、ポリアミド、アミンアダクトなどの硬化剤、顔料、有機溶剤を主な原料とし、鉄鋼構造物を建造後にサンドブラストやグリットブラスト処理してから膜厚75μm前後に塗装するもので、長期防錆を目的とする下塗塗料になります。歴史的には亜鉛めっきに相当する厚みと防錆性を有する塗料として生まれました。厚膜形ジンクリッチペイントは、重防食塗装系のベースとなる塗料であります。その上に遮断性に優れたエポキシ塗料下塗を塗って亜鉛の溶解消耗を抑制し、さらに耐候性の優れたポリウレタン樹脂やフッ素樹脂などの上塗り塗料と組み合わせた重防食塗装系は、国内では海上長大橋などでその耐久性が高く評価され、作業性もよいです。
 厚膜形無機質ジンクリッチペイントは、有機質ジンクリッチペイントと異なり塗膜内に多くの空気孔が存在するため、そのまま上塗りすると、塗膜を通じて表面まで逃げた空気がピンホールとなり、また、途中までの空気は泡となってしまいます。そのため、次の工程に先立って、その工程に使用する塗料を霧状(mist)に薄く塗装するミストコート(mist coat)を特に間に入れる必要があります。ミストコートは、無機質ジンクリッチ塗膜の上に塗る塗料の場合はエポキシ樹脂塗料を希釈剤で30~60mass%に希釈したもので、粘度が低いため空気孔内に浸入し、内部空気と置換して内蔵空気を排除する機能を持ちます。
 エチルシリケート系厚膜形ジンクリッチペイントは単一塗膜だけで、船舶の石油製品タンクやバラストタンク内面に使用されています。アルカリシリケート系厚膜形ジンクリッチペイントは水系塗料で強靱な塗膜を形成しますが、フラッシュラストを生じやすく作業性に難点が大きいため、国内では普及していません。現在では、無機質ジンクリッチペイントといえばエチルシリケート系が一般的です。

関連用語:ミストコート

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さび止め顔料(rust inhibitive pigment, anti-corrosive pigment, rust preventive pigment)




 塗膜下腐食を化学的に抑制する作用を有する顔料をさび止め顔料と呼びます。わずかな水分、酸素などの腐食性物質が塗膜を透過し、素地金属面に到達しても、塗膜下腐食の進行を抑える目的で使用されます。作用機構により次の3種類に分類されます。
 鉛丹(Pb3O4)、亜酸化鉛(Pb2O)、シアナミド鉛(PbCN2)、塩基性クロム酸鉛(PbCrO4・PbO)、塩基性硫酸鉛(3PbO・PbSO4・H2O)など、油性系および油変性合成樹脂系バインダーと反応して金属石けんを作る性質のあるものを塩基性顔料と呼びます。この作用による塗膜の遮断機能の向上、顔料自身および金属石けんの抽出水の化学的腐食抑制作用によって塗膜の防食硬化を向上します。
 ジンクロメート(主成分はクロム酸亜鉛H2CrO4Zn)、ストロンチウムクロメート(SrCrO4)などは強い酸化性のクロメートイオンを溶出し、これらの可溶性成分の不動態化作用により防食作用を行います。このような機能を有する顔料を可溶性顔料と呼びます。
 さび止め顔料として用いられる金属粉顔料は亜鉛末であり、ジンクリッチペイントとして広く使われています。これは亜鉛末の電気防食作用を基本とした塗料になります。
 以上述べたように従来利用されているさび止め含量は重金属を含むものが多いため、最近これを含まないものが開発され実用化されています。リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛(ZnMoO4)、メタホウ酸バリウム(BaB2O4)などがあります。
 なお、アルミニウム粉、MIO顔料(micaceous iron oxide、主成分は酸化第二鉄α-Fe2O3)などもさび止めを目的とする塗装系によく用いられる顔料でありますが、薄片状や雲母状の顔料による腐食因子の遮断機能、塗膜の耐候性などの向上、着色などの目的に使用されており、腐食の化学的抑制作用を有するものではありませんので、さび止め顔料とは呼ばれません。

関連用語:ジンクリッチペイント

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