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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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アクリル樹脂塗料(acrylic resin coating)



アクリル樹脂をバインダーとする塗料で、透明性、光沢、耐候性に優れ、上塗り塗料として用いられます。それぞれバインダーとしてのアクリル樹脂の形態から溶剤形、NAD、水系、粉体塗料などが作られますが、それぞれの概要は以下のようなものになります。
 溶剤形には熱可塑性アクリル樹脂塗料と熱硬化性アクリル樹脂塗料があります。熱可塑性アクリル樹脂塗料はアクリルラッカーと呼ばれ、分子量2~5万のアクリル樹脂を溶剤で溶かしたもので、溶剤の蒸発により成膜します。アクリルラッカーは金属、金属建材などの上塗りに用いられますが、溶剤含有量が多いため近年は使用量が少ないです。熱硬化性アクリル樹脂塗料では2-ヒドロキシルエチルメタクリレート等の水酸基含有モノマーを共重合し、水酸基価40~120 KOH/g程度の樹脂とし、メラミン樹脂あるいはポリイソシアネートと混合して用います。メラミン樹脂硬化の場合は内部触媒としてアクリル酸などのカルボン酸含有モノマーを少量共重合します。熱硬化性アクリル樹脂塗料は家庭電化製品、金属建材、自動車上塗りなどの分野に用いられます。
 NAD(non-aqueous dispersion) 形は脂肪族炭化水素溶剤中に0.1~数μmのアクリル樹脂粒子を分散させたもので、当初アメリカのRule66による芳香族炭化水素、ケトン系溶剤の規制に対応して開発され、NADラッカーという名称で自動車の塗装に用いられましたが、現在では低臭形ハウスペイントとして用いられるほか、自動車用塗料のレオロジー調整剤に用いられます。
 水系にはエマルション形、コロイダルディスパーション形、水溶性形があります。エマルション塗料は界面活性剤の存在下、水中でエマルション重合して得た0.1~数μmの分散体を用いた塗料で、建築用などに用いられます。近年はコア/シェル形の二重構造を持つエマルションが自動車用ベースコートに開発されています。コロイダルディスパーション、水溶性形は樹脂酸価30~60mg KOH/gに設計したアクリル樹脂を溶液重合で合成し、脱溶剤後、アミン、水を加えて得ます。工業用、家庭用塗料に用いられます。粉体塗料には溶液重合した後脱溶剤した樹脂、懸濁重合するなどした得られた樹脂から水を除き球状粒子とした樹脂を用います。粒子間の融着を防ぐためガラス転移温度を55℃程度以上に設計します。粉体塗料は建材、電気製品などに用いられます。一度に厚膜が得られ、エッジ部分にも塗膜が付きやすく、塗料のリサイクルが可能などの特徴があります。



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潤滑油について



《潤滑油について》

 潤滑油は基油(ベースオイル)と種々の機能を持つ添加剤から成り立っています。機械や自動車の発展に伴って、おもに摩擦や摩耗の制御といった、潤滑油への要求を満たすために、いろいろな潤滑油添加剤が開発され、配合されています。

《ベースオイル(基油)について》

 PAOはポリアルファオレフィンの略で、アルファオレフィンを重合したのち水素化処理して造る合成潤滑油です。PAOの特性として挙げられるのは、高い粘度指数、優れたせん断安定性・低音起動性、硫黄や窒素といった不純物を含まないこと、熱や酸化安定性が良好であること、トラクション係数が低く,省エネルギ化が期待できること、分子構造が均一なため蒸発損失が少ない利点があること、良好な水分離性、化学的に安定で熱伝導率が高い特性もあること、ということで枚挙に遑がありません。
 PAOを使用する上での注意点としては、添加剤の溶解性が問題になることがあるため、その対応が必要になります。また、工業用としては、鉱油に比べイニシャルコストが高いことから普及しにくい面はあります。しかしながら、PAOの特性を十分活用すれば長寿命化によるメンテナンスコストの低減(省力化)、省エネルギー等によってトータルコストが削減でき、イニシャルコストを十分にカバーすることができるでしょう。
 一方、ポリオールエステル(POE)は、潤滑性、耐熱性、低温流動性、難燃性、生分解性に優れていることから、わが国においても環境問題対応潤滑油基油として過去20年間に飛躍的に増加しています。POEは鉱物油系などの潤滑油に添加・使用することで、潤滑性の向上を図ることができますが、鉱物油系に比べると高価であり、エステル結合を有することからに加水分解を起こしやすくさらに、鉱物油よりも極性が高いために鉱物油が用いられる用途にそのまま使うとシール材等の樹脂材料との不適合性や添加剤の選択の難しさ、高吸湿性などの問題があります。
 しかしながら、次世代の自動車エンジンとして研究されているセラミックガスタービンエンジンのエンジン油として、POEが評価されてきています。このタービンは高温・高速で回転し、高効率、省燃費が得られますが、従来の潤滑油では耐熱性、耐摩耗性、極圧性の面から使用が極めて難しく、短鎖脂肪酸POEは、これに耐えうるものとして候補に挙がっています。

《添加剤について》

 まず挙げられるのが清浄分散剤で、これはエンジンなどの高温運転で生成する有害なスラッジを金属表面から除去し、スラッジ・プリカーサーを化学的に中和し、エンジン内部を清浄にする働きがあります。代表的な化合物としては、スルホネートやサリシレートの金属塩が挙げられます。
 また、摩擦や摩耗を制御する役割のある添加剤として油性剤や極圧剤と呼ばれる添加剤があります。油性剤には、高級カルボン酸、高級アルコールなど、極圧剤にはリン、硫黄、塩素といった化合物になります。触媒の世界では“触媒毒”と呼ばれるような元素や化合物が潤滑の世界では非常に高い効果を発揮します。

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MIO塗料(MIO paint)




 防食塗装系の独特な中塗り塗料としてMIO塗料があります。MIOはMicaceous Iron Oxide (鱗片状酸化鉄)の略で、天然鉱石より精製された暗褐色の結晶性酸化鉄で鱗片状をなす顔料で、塗膜面に平行に並ぶ性質があり、外部から侵入する物質の透過経路を長くすることによって塗膜の遮断機能を向上します。また日光を反射するので耐白亜化性が良くなります。これらの特徴により海外では防食塗料の中塗りや上塗りとして使用されています。
 MIO塗料を中塗りとして使用する場合は2つの利点を生じます。第1点は上塗りとの塗装間隔が長くなっても、中塗りと上塗りとの層間付着性の低下が少ないことです。これはMIO塗膜面が比較的表面あらさが大きく、上塗りの付着性が良いこと、ほとんど白亜化しないことによると考えられています。
 鋼構造物の防食塗装では工場塗装で下塗りを行い、現地建設作業終了後中塗りを塗装することがありますが、その場合下塗りと中・上塗りの塗装間隔が長くなることがあります。この際に工場の最終塗装をMIO塗料中塗りとすることにより層間付着性の確保をはかることができます。
 また、通常塗り重ねることのできない下塗りと、上塗りの間にMIO塗料を中塗りとして入れることによりその組み合わせを可能にする利用法です。MIO系中塗り塗料は顔料濃度が大きく、それ自身耐溶剤性が大きいとともに上塗りの溶剤が下塗りまで浸透することを防ぐ機能を有します。たとえば油性さび止めペイントの上に塩化ゴム系塗料を塗り重ねた場合には塩化ゴム系塗料の溶剤が油性さび止めペイントの塗膜を膨潤させるので通常このような組み合わせの塗り重ねはできません。しかし、下塗り油性さび止めペイント、中塗りフェノール樹脂系MIO塗料、上塗り塩化ゴム系の塗装系にすれば、重ね塗りが可能となります。この塗装系は橋梁・石油タンクなどの鋼構造物用に使用されていました。
 しかしながら、工場で上塗りまでの全塗装を行うことが主流になってきていることや、その表面粗さのため、いったん塗膜表面についた塩分などの付着阻害物を除去することが困難であり、上塗りとの付着性に影響を及ぼすケースがあることなどから、次第に使用されなくなってきています。JIS規格として、ビヒクルにフェノール樹脂を用いたJIS K 5554 「フェノール樹脂系雲母状酸化鉄塗料」及びエポキシ樹脂を用いたJIS K 5555 「エポキシ樹脂雲母状酸化鉄塗料」がありましたが、両規格とも2009年に廃止されました。


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