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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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自動車塗料・塗装技術の今後(グローバル展開塗装系)



▽国内における塗装系展開動向
 今後、国内においては、現在展開中の中上塗り塗料の現行保持機能のさらなる高機能化が求められ、中塗り塗料は耐チッピング性、、ベース塗料は意匠性、クリヤー塗料は耐擦り傷性及び外観などの主要品質機能の向上に対する取り組みが推進されていくと考えられます。また、環境配慮に向けた取り組みは継続されるため、現在導入展開されている工程短縮塗装系は、水性3WET(1PH:中塗りレス)系に移行展開されていくでしょう。そして、さらに環境負荷(二酸化炭素)及び生産性コスト(エネルギーコスト)低減に向け、乾燥炉工程低温化の動きが示唆されており、今後は低温効果可能な中上塗り塗料の設計とともにボディ/バンパー一体化塗装系の導入展開が進んでいくと予想されます。

▽海外・グローバル塗装系展開動向
 グローバルにおいては、国内よりも積極的に環境負荷(二酸化炭素/VOC)低減に向けた取り組みが既に展開されています。
 欧米におけるVOC削減に向けた規制方法は、日本の発生源に対する規制対応と異なり、製品に対する規制(各製品ごとに基準値を設定し規制)が施されており、基準に適合しない製品は販売できなくなります。そのため、水性塗料への移行の動きが促進され、欧州では2007年、北米では2009年から水性塗料の使用展開が実質義務付けられています。また、アジア/欧州/中東/アフリカ/アメリカ地域においては、二酸化炭素削減に向けた工程短縮塗装系が拡大展開されており、国内同様、水性3WET(1PH:中塗りレス)塗装系のグローバル展開が推進されています。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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自動車塗料における品質向上対応(高機能/高意匠性塗料の展開)



現在、環境配慮型塗料、塗装システムとして水性3WET系工程短縮塗装システムが展開されています。また、高品質が要求される車種では従来からの3C2Bシステムが継続し利用されています。いずれの塗装系でも塗膜としてのさらなる高機能化が要求されています。中塗り塗料においてはその塗膜の主要機能である耐チッピング性の向上、ベース塗料では意匠性の向上、クリヤー塗膜においては擦り傷性、意匠性(艶消しタイプ)の高機能化に向けた取り組みが行われています。

▽中塗り塗料の高機能化
 現在の自動車ボディ用鋼板には多くのGA材が適用されており北欧米などの寒冷地で使用される車体のチッピング対象特定部位には中塗り塗料のみではなくソフトチッププライマー(CPr)が塗装されています。これにより岩塩、砂利などによりチッピング素地剥離(GA剥離→腐食)被害は防止されていますが、CPr非塗装部位において同被害が多発しており車体全体におけるチッピング性能を向上すべくCPrの機能を有した高チッピング中塗りの開発が求められています。チッピング性能と中塗りとしても作業性の最適物性値を明確にして開発検討が継続されています。

▽ベース塗料の高意匠、高機能設計
 最近のベース塗膜に求められる一つの意匠トレンドは高彩度、高FF(フリップ・フロップ)性/高輝度、高干渉の方向にあります。これまでの意匠設計は主に目標意匠に適合した色材種(高輝材、顔料等)を選定し塗装系に活用することを中心に行われてきましたが、最近では色材種の特長をより活かすためにベース塗装工程において積層による発色を利用した開発が活発化しています。第1ベース層と第2ベース層での発色機能の役割を分担させることにより高彩度や高FF塗装設計を可能にしています。例えば第1ベースをメタリック層とし隠ぺい力を付与し、第2ベースは透明性の高い着色顔料のみとすることで得られる高彩度塗装や、第1ベースと第2ベースに異なる高輝材を使用した金属感のある高FF性塗装系が開発されています。これらの塗装系では車両全体としての違和感に配慮した第1ベース層と第2ベース層の色相の調整や車体と異なる塗装工程を経る樹脂部品とのカラーマッチングを考慮した塗装設計が要求されます。
 また、従来とは全く異なる視点から、建築用塗料では一般的な遮熱塗料を自動車用に展開しようとする動きも見られます。低明度色の遮熱塗装系のための要素技術は、赤外線を反射する塗膜という意味で、今後重要になると予測される自動運転のためのセンシング技術に対応する塗装系の開発にも共通するものとなります。

▽クリヤー塗料の高機能化

1.艶消しクリヤー塗料
 ここ数年、艶消しクリヤーによるマット調意匠がカラートレンドとして着目されています。この艶消し設計法としては、無機系粒子の利用が一般的でありますが、最近では機能性を付与した有機粒子を利用し、艶消しと機能付与の両立を目指したクリヤーの開発が進められています。
 艶感は添加される粒子の大きさ、量で設計可能であり、またトップコートでの艶消し設計であり、既存の塗色への展開も可能です。この艶消しクリヤーの最大の課題は補修時のポリッシュによる艶感の均一化でありましたが、工法改善により、この問題は改善されつつあります。欧州では艶消し意匠拡大の方向にあるものの、日本では、これまで、艶消し効果持続性、補修製面での懸念などから、消極的な推進状況にありましたが、今後、意匠の多様化に伴って需要は拡大化する可能性があります。

2.超擦り傷クリヤー塗料
 近年、自動車購入時の塗膜の光沢・鮮鋭性を長期にわたって維持する高耐久塗膜への期待が高まっています。鮮鋭性低下の主因としては洗車時に発生する擦傷が考えられます。この擦傷は洗車ブラシや塗膜表面上のダストの付加により塗膜が変形、破壊することにより生じます。また爪や鍵、木の枝など塗膜より硬いものが接触することでも傷は生じます。一般に洗車により発生する傷は幅が狭く浅い傷でありますが、後者の場合は傷の幅が大きく深い傷になります。
 この傷を低減できる塗料として、耐擦り傷クリヤーが開発されており、その設計コンセプトとしては以下のものがあげられます。
 ①塗膜の架橋点間のソフトセグメントによる弾性回復を利用
 ②弾性回復型塗膜に高硬度粒子を導入することで、弾性回復に加えダストなどの付加物による初期のへこみ量を低減
 ③高硬度膜を弾性回復にすることで、弾性回復に加えダストなどの付加物による初期のへこみ量を低減
 今後、この耐擦り傷機能を付与したクリヤーは初期品質長期維持目的で展開が進むと考えられます。

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環境保護および経済性に配慮した自動車塗料・塗装技術対応



▽自動車塗料・塗装面からの対応(工程短縮塗装の展開)
 自動車生産工程において排出されるVOC/二酸化炭素による大気汚染および地球温暖化への影響抑制に向けた塗料・塗装技術からの取り組みを説明します。
 光化学スモッグなどの大気汚染要因となるVOCは、主にボディ塗装用塗料(中上塗り)に含まれており、大部分は塗装工程の塗装ブース・乾燥炉から排出されています。2006年の改正大気汚染防止法の施行に先駆けて2000年頃から塗料面では、低VOC塗料の採用(溶剤系塗料のハイドリッド化や水性系塗料化)、塗料使用用削減(洗浄シンナー使用量低減)など、そして塗装技術面では、塗着効率の向上(ロボット塗装化)などの取り組みが実践されており、これらの対策効果により2010年度2000年度対比でVOC40%削減目標(自工会目標)は達成され、現在、さらなる削減化のため、既述の対応は引き続き継続されています。
 地球温暖化対策については、生産工場での電力・燃料などのエネルギー使用に伴う二酸化炭素の削減に向け、1990年度対比で2008から2012年平均25%削減目標(自工会目標)を立て省エネルギー対策が実施されました。その結果、2011年度時点において35%削減されており、2008から2012年平均25%削減目標は達成されました。2013年以降も削減に向けた自主規制が継続され、新たに2020年度、1990年対比で28%削減目標が策定されており、今後、塗料・塗装面からの対策として、現在展開中の工程短縮システムの導入展開がより加速すると考えられます。工程短縮塗装系(3WET塗装系)は、従来の塗装系(3C(コート)2B(ベーク)塗装系)と異なり、PH(プレヒート)工程や焼付け乾燥炉工程を省くことによりVOCと二酸化炭素削減の両立化が可能で、経済性においても省工程による生産性コストの低減も可能な塗装技術であることから今後も採用が増えてゆくと考えられます。本塗装系は、品質面において、3WET塗装工程(3C1B系)による特徴から、従来の3C2B塗装系に比較して、
 ①中塗り/ベース間での混層による仕上がり外観および意匠性の低下
 ②焼付け工程削減(2回→1回)による下地隠蔽不足による仕上がり外観の低下
  (電着肌形状がクリヤーまで転写され仕上がり外観が低下)
 ③各層間での混層による膜物性機能低下によるチッピング性など塗膜性能低下
などの課題が開発段階で抽出され、、それぞれの課題について各層での界面制御に向けた粘性制御・硬化性制御対応などにより、設計改良が実施され、現在に至っています。
 さらに、水性3WET(2PH)塗装系は、さらなる二酸化炭素削減、生産性コスト削減、塗装品質安定化に向け、中塗り塗装工程およびPH工程が削減された水性3WET(1PH)中塗りレス塗装系に移行してゆくと予想されます。

▽自動車塗装設備面からの対応
 塗料使用用削減=VOC低減目的により、レシプロ塗装機からロボット塗装機に移行しています。ロボット塗装機では、塗装部位のみを効率的に塗装できることから、レシプロ塗装機より塗着効率が高く、結果塗着塗料ロスを低減できることにより、VOC排出量削減に貢献できます。
 また、ここ数年、現状のロボット塗装機1台当たりの塗装能力には限界があるため、塗装能力向上を目的として塗装機の処理できる塗料量を大幅に増やした大吐出量型塗装機が採用されています。この塗装機によりロボット塗装機台数の削減できるので、ブース長の削減が可能となり、これにより温湿度調整に使用されるエネルギー低減に繋がり、結果として二酸化炭素排出量の削減が期待できます。
 既述の工程短縮塗装システムにおいて、水性3WET(1PH)中塗りレス塗装系では、ベース塗装工程でのベース塗装回数は2ステージから1ステージ塗装となり、吐出量増量塗装が求められるため、今後は本塗装機の採用が拡大されてゆくと考えられます。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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