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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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NAD塗料の特徴



NAD塗料は、造膜時ポリマー粒子の融合に熱の作用が必要とする性質から、熱硬化性アクリル樹脂塗料の範疇に入るもので、その特徴は熱硬化性アクリル樹脂塗料と比較して評価されます。しかし、塗膜形成助要素は有機溶剤で、塗膜形成主要素である樹脂は分散粒子として有機溶剤中に分散しているため、一般溶剤型塗料にない特徴を有しています。

 (1)粒子ポリマーの性質が系全体の粘度にあまり寄与しないので、高分子量の粒子ポリマーを比較的少量の溶剤で塗装可能とする粘度とすることができます。したがって、樹脂の高分子量化による塗膜性能の向上と、高不揮発分化が可能です。
 (2)塗料の粘度は高不揮発分にも拘わらず低粘度で、塗装時、溶剤が離脱しやすいため、塗着膜の粘度が容易に高くなることから、たれにくく、メタリック色の色ムラが少なく、ゴミの付着も少ないです。
 (3)従来塗料の溶剤は、溶解力の関係から芳香族炭化水素系が主体でしたが、NAD塗料は、粒子ポリマーを溶かさないので、光化学不活性な脂肪族、脂環族炭化水素系溶剤を使用するため低公害塗料です。
 (4)吹き付け塗装の際、塗料の霧化から塗着までの粘度上昇が大きいため、塗料ミストの跳ね返りが少なく塗着効率が良く、肉持ち、仕上がり外観も向上します。

 NAD塗料は上記の特徴がある反面、下記に示す問題点もあります。

 (1)顔料分散の場合、ロールミルや、サンドミルなどで練合すると分散粒子ポリマーが破壊されて、増粘し分散が困難になるため分散方式を検討しなくてはなりません。
 (2)NAD塗料の造膜形成過程が一般溶剤型塗料と異なるため、付着性、耐酸性、鮮映性などの点で塗膜性能が劣る場合があります。

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非水系ディスパーションの安定化の原理と重合の方法



▽非水系ディスパーションの安定化の原理
 非水系ディスパーションの安定化の原理は、粒子表面に吸着した分散安定剤の溶媒和層の立体的反発層(吸着層または吸着保護層ともいいます)によって安定化されています。ICIの研究者らはこの立体的反発層の厚みについて、12-ヒドロキシステアリン酸オリゴマー誘導体のポリメタクリル酸メチルグラフト化合物の場合約130Åの値を確認しています。また、12-ヒドロキシステアリン酸の縮合ポリマー鎖の分子量から推定した鎖長とほぼ一致することから、安定分散粒子の表面の反発層中の溶媒和ポリマー鎖は、ほぼ完全に伸びきった形で存在していることを推定しています。

▽非水系ディスパーション重合の方法
 非水系溶媒(炭化水素系溶剤)中に分散安定剤を溶解し、これに分散ポリマーを形成するモノマー(分散安定剤はモノマー中に溶解して使用することもできる)と開始重合剤を加えて重合することにより、容易に得られます。

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非水系ディスパーションの構成



非水系ディスパーションの構成は次のような成分から成り立っています。

 (1)分散媒は脂肪族炭化水素を主体とする有機溶剤。
 (2)分散ポリマーは0.1~0.8ミクロンの粒径の分散状態にある。上記の分散媒には不溶の主体ポリマー。
 (3)分散安定剤は主体ポリマー粒子の表面にあり、粒子の分散状態を安定化する安定剤ポリマー(立体的反発による安定化作用)。
 (4) (1)~(3)のほかに、分散媒中に一部溶けている低極性ポリマー。これはNAD製造時に全てのポリマーが分散ポリマーとならずに、一部可溶化ポリマーとなったもので、この可溶化成分と分散ポリマー粒子との比をディスパーション化度と呼ぶ。

 分散媒は、脂肪族炭化水素を主体とし、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ミネラルスピリットその他のパラフィン系、ナフテン系石油成分が使用されます。
 分散ポリマーは、通常の条件でラジカル重合のできるアクリルポリマーなどビニル系ポリマーになります。分散媒に不溶のポリマーであり、比較的極性の高いポリマーを使用します。MMA、EA、AN、HEMAなどの重合体より成ります。
 分散安定剤は分散媒に可溶な成分と、分散媒に不溶でポリマー成分には相溶するような成分との極性を持つ異なる2成分から成り立っています。
 NADの技術は、ほとんどがこの構成成分中の分散安定剤の種類および分散ポリマー中の官能基の種類の相違によるものです。
 アルキル化メラミン樹脂を分散安定剤として用いる方式はクックペイント社とフォード社の方式があり、分散ポリマーについてはクック社は水酸基含有アクリルを使用し、フォード社はダリシジル基含有アクリルエステルを使用しています。ICI社は分散安定剤としてポリー12-ヒドロキシステアリン酸オリゴマー誘導体を使用しています。

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