《概論》
▽防錆顔料は化学的に金属の腐食を抑制する機能を持つ顔料です。
→防錆効果は顔料から溶出する防錆イオンに基づきます。
▽旧来は鉛やクロムなどの有害物質を含むものが多用されてきましたが、最近ではリン酸塩や亜鉛などから構成されるものに変化してきています。
▽防錆顔料は比較的硬度が高いうえに、一次粒子径が大きいものが多いので、分散しても粗粒や顔料ブツが残ったり、光沢が低いままであったりします。
多くは無機顔料で表面自由エネルギーが大きいので、濡れには問題が起こりにくいです。
▽一方、分散安定化では、顔料からイオンが溶出してくるので、樹脂や分散剤の溶解性に影響したり、樹脂や分散剤の吸着店が変化します。
→分散安定性が不良となる場合があります。
すなわち、塗料が顕著なチキソトロピー性を示したり、貯蔵による凝集ブツが発生する場合があります。《リン酸塩系防錆顔料》
▽リン酸塩には、正リン酸塩、ポリリン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などがあり、その使用する金属も多くの無公害型のものが検討されています。亜鉛、カルシウム、マグネシウムをはじめとして、チタン、マンガン、ストロンチウム、バリウム、鉄、ジルコニウム、セリウムなどのリン酸塩が有効であるとされています。これらの中で、リン酸亜鉛系が鋼板・安価用、リン酸マグネシウムが亜鉛用として、鉛、クロメート系防錆顔料の代替に使用されています。
▽リン酸塩の防錆機構については、古くから研究されています。その作用は、リン酸塩顔料から溶出したリン酸イオンが鉄鋼表面の鉄イオンと反応して水不溶性の複雑な密着性のある化成皮膜を形成し、これが鉄鋼表面を不動態化することによります。亜鉛系素地に対してはイオン化傾向の関係もありマグネシウム塩が有効です。