低温型の脱脂剤を使用するときの問題点としては、素地に付着している油脂類が一定であるかどうか、また素地金属のスポット部、合わせ目からの油のしみ出しが問題となります。脱脂剤の温度の役割は油を緩める作用があり、脱脂剤中に含まれている界面活性剤は、その界面活性剤にとって一番浸透しやすい温度があります。そのため低温化するには付着湯の種類が低温で脱脂しやすいものを選ぶ必要があります。温度としては常温型の脱脂剤は付着油の条件、被処理物の形状がよほどよいときに使用され、通常は40℃くらいで使用できる脱脂剤を低温型といっています。
浸漬法ではスプレー法と違い物理的な作用がないため脱脂時間が長くなる傾向があります。脱脂剤の種類にもよりますが、通常脱脂時間と温度の関係は10℃上昇するごとに2~3倍脱脂時間が短縮されます。浸漬法によるアルカリ脱脂を低温化するに際しては脱脂時間というものを考慮しなくてはなりません。
スプレー法では界面活性剤から発生する泡の問題があるためその脱脂剤の使用最適温度が定められています。その温度より低いと泡の発生が起こり、高いと界面活性剤が分離浮上し、脱脂能力を弱めてしまいます。スプレー法では圧力という物理的な作用も加わるので浸漬法に比べ低温化はしやすいといえます。問題点としては脱脂剤中のn-ヘキサン値は高くなります。これは界面活性剤由来のものになります。