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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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リン酸亜鉛カルシウム皮膜化成処理



リン酸亜鉛カルシウム処理はリン酸亜鉛系処理と同様、鋼の塗装性能向上や、冷間塑性加工用潤滑皮膜の下地処理として用いられています。加工液成分もリン酸亜鉛系処理にカルシウムイオンを添加することによって得られます。
 リン酸亜鉛カルシウム処理は、ショルツァイトと呼ばれる結晶系であり、フォスフォフィライトやホパイトと比較して熱特性の点で特徴があります。
 合成された結晶の熱分析結果から、結晶水の脱離速度はホパイトの場合は115℃で4水塩から2水塩、275℃で2水塩から無水塩であり、フォスフォフィライトの場合は、123℃で4水塩から2水塩、305℃で2水塩から無水塩になることがわかっています。これに対してショルツァイトは165℃で2水塩から1水塩、413℃で1水塩から無水塩であり、結晶水の揮散温度ふぁ高温にずれています。熱による結晶の破壊は、結晶水の揮散離脱によって生じますので、リン酸亜鉛カルシウム皮膜は高温まで結晶破壊が起こりにくく、結晶水の絶対量も少ないので、完全に脱離しても結晶破壊への影響は少ないです。
 このように、リン酸亜鉛カルシウム皮膜は耐熱性に優れる皮膜であり、粉体塗装のような高温焼き付け型塗装の下地処理としても有用です(ただし、通常の塗装系であればリン酸亜鉛系処理の方が優れています)。また、リン酸亜鉛カルシウム処理はリン酸亜鉛系処理の場合と同様、冷間鍛造用潤滑皮膜の下地処理にも適用され、強加工時にかかる熱に対して優れた特性を発揮します。ただし、リン酸亜鉛カルシウムは石鹸との反応性(金属石鹸の生成)が乏しいために、処理液中のカルシウムイオン濃度をコントロールすることで、特定割合のリン酸亜鉛皮膜を共析させる必要があります。

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リン酸鉄皮膜化成処理



リン酸鉄皮膜は鉄鋼材料に適用され、防錆処理、塗装下地処理として用いられています。加工液の主成分はリン酸ナトリウムまたはリン酸アンモニウムであり、適当な酸度(pH)に調整して用いられます。皮膜は青色などの外観を呈したアモルファス(非晶質)状のリン酸鉄水和物であり、エッチングによって溶出した鉄イオンを、加工液中のリン酸イオンとが沈殿反応することによって素材上に析出します。
 防食性、塗膜性能に関してはリン酸亜鉛系皮膜より劣りますが、処理コストや作業性の面では有利な塗装下地処理です。

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塗装下地用リン酸亜鉛系皮膜化成処理



塗装後の塗膜下は、金属の腐食に伴ってアノード部では酸、カソード部ではアルカリを呈することが知られています。また、形状物に対する塗装方法としては、つきまわり性の良い電着塗装、とくにカチオン電着塗装が一般的であり、カチオン電着の電着塗装時には処理物表面が一時的に強アルカリとなってしまいます。よって、塗装下地用の塗膜には化学的安定性(特に耐アルカリ性)が求められます。化学的安定性という点で、フォスフォフィライトとホパイトを比較すると、フォスフォフィライトの方が、特にアルカリに対する安定性が優れていることが確認されています。鉄鋼材料に対して、フォスフォフィライト含有率の高い皮膜ほど、良好な塗膜性能が得られるようになるのは、この理由によります。
 また、このようにフォスフォフィライト含有率の高い皮膜を得るための処理条件としては、エッチングによって溶出する鉄イオンが加工液中へ素早く拡散してしまうスプレー処理よりも、鉄イオンの拡散が遅く、皮膜中に取り込まれる確率の多い浸漬処理を採用する方が有利であり、近年では浸漬による処理が主流になっています。
 リン酸亜鉛皮膜を塗装下地に利用する場合は、皮膜重量として2~3g/㎡程度の均一で緻密な皮膜結晶を析出させる必要があり、浸漬処理にてこのような皮膜を析出させるには、
①処理液中に均一エッチング剤としてフッ化物を添加する
②酸化促進剤として亜硝酸を添加する
③化成処理前にチタンコロイド系の表面処理を行う
などの対応が必要となります。特に現在、低温、恒時間の浸漬処理において、塗膜性能の良好な均一緻密なリン酸亜鉛系皮膜が得られるようになったのは、チタンコロイド系表面調整剤の基礎研究とその改良によると言っても過言ではありません。
 亜鉛めっき鋼板やアルミニウム合金などといった、鉄鋼材料以外の素材の塗膜性能は、加工液中にニッケル、マンガンなどの金属イオンを添加することによって向上させることが可能です。加工液中のニッケルイオン、マンガンイオンはホパイト結晶の亜鉛原子に置換する形で皮膜結晶中に取り込まれ、皮膜を改質します。皮膜中のニッケル成分、マンガン成分は皮膜の耐アルカリ性を向上させ、ニッケル成分に関しては、素地が亜鉛の場合、素地に対する防食性をも併せ持っています。
 アルミニウム合金を処理する場合には、エッチング剤として加工液中に添加させるフッ化物が特に重要な働きを示し、低濃度であれば十分な皮膜形成がなされず、逆に添加量が過剰であればフッ素化合物がリン酸亜鉛皮膜とともに析出し、塗膜密着性不良の原因となってしまいます。

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