金属板に振動を与えると加振源を取り去っても、減衰はするもののある時間振動が継続します。その結果として音を発し続けます。しかし制振塗料を塗装したものは、短時間で振動が減衰して音の発生が止まります。振動のエネルギーが塗膜層の伸び縮みの変形によって、熱エネルギーとして吸収されたためです。このような機能を持つ制振塗料は合成樹脂で変性したバインダーにマイカやグラファイトなどの顔料や充填剤を分散して得られます。自動車の床板裏目や家電機器類のモーターなどに多く使われており、防止塗料といえば制振塗料を指す場合が多いです。
しかし制振効果が温度によって変わる(使用しているバインダー(樹脂)のガラス転移点近辺で最大効果を発揮する)ことや、基材の2倍程度の厚膜でないと十分な効果を発揮しないなどの問題があります。
小さい膜厚でも制振効果を出せるようにする研究も進められています。いわゆる多層型制振塗料と呼ばれているもので、剛性が大きくて変形しにくい上塗り(拘束層)と軟質の下塗り(吸収層)の二層の組み合わせからなり、層の構造面から改善を図ったものになります。