▽概要
合成樹脂エマルション塗料は、ビヒクルとして使用する合成樹脂エマルションの種類によって各種のものがあり、塗料化に当たっては、粘度付与剤(ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなど)や分散剤、湿潤剤、消泡剤、凍結融解安定剤(エチレングリコール、ジエチレングリコールなど)などを添加して調整します。
▽酢酸ビニル樹脂エマルション塗料
酢酸ビニル樹脂エマルション塗料は、酢酸ビニル単独重合(ホモポリマー)と、可塑性を与えるモノマー例えばアクリル酸メチル、またはブチル、マレイン酸ブチル、オクチル酸ビニルなどとの共重合(コポリマー)により内部可塑化したものとあります。前者のホモポリマーエマルションの場合にはその塗膜性能を助け、顔料の結合力を増大させる目的で、可塑剤が10~30%程度添加されます。
可塑剤としては一般にDBPが用いられ、時にはTCPも用いられることがあります。価格は安価でありますが、内部可塑化した後者のコポリマーエマルションの方が、耐候性、耐水性、貯蔵安定性など、性能面で優れています。例えばエチレングルーブを導入した酢酸ビニルエチレンコポリマーエマルションは耐候性、耐けん化性、柔軟性に優れ、アクリル酸エステルによる共重合のものは耐水、耐アルカリ性に優れています。また3級カルボン酸のビニルエステルと共重合させた樹脂は耐水、耐アルカリ性、耐候性が良好なことから、外部エマルション塗料として、また、アルカリシーラーとして使用されており、今後はコポリマーエマルション塗料が多く用いられるようになると考えられます。
▽アクリル系エマルション塗料
アクリル系エマルション塗料は、各種のアクリルモノマーまたは少量のビニルモノマーの共重合ラテックスをビヒクルとした塗料で、酢酸ビニル系よりも高価ではありますが、耐水性、耐アルカリ性、耐候性などの塗膜性能に優れています。そのため、一般建築物の外部用として用いられるほか、紙、繊維、皮革などにも用いられます。欠点としては顔料が多い場合に造膜性が酢酸ビニルなどに比べて劣る場合があります。