常乾アルキド樹脂塗料は汎用塗料として多く使用されている塗料です。原料面での経済性あるいはリサイクル原料の使用も考えると、今後とも重要な塗料であり、欧米では硬化メカニズムあるいは水性化する方法、さらには利用のための基礎研究など広範囲の研究活動が活発な状況です。
エマルションを安定化するためには、微細に分散する必要があることはよく知られているところですが、それ以外に水中で劣化しないドライヤーの開発とドライヤーの非鉛化という二つの問題があります。最近多くの基礎的な研究結果が発表され、その作用機構が徐々に明らかになりつつあります。
アルキド樹脂の酸化重合による乾燥は、硬化時間の長いことが一つの欠点といわれていますが、水性化した場合はその時間はさらに約1.5倍になるといわれています。この原因は、水の酸素溶解量が少ないことと、水中では励起状態が長く続かないこと、ドライヤーが水と反応して劣化しやすいことが原因といわれています。
水性塗料におけるドライヤーの存在場所とpHの関係は高pHで樹脂に配位しています。pHと効果速度の関係を見ると、pHの高い場合に早く硬化しています。効果速度の継時劣化は、それほど大きな変化ではありませんが、顔料を入れると著しく加速されます。この劣化の原因は樹脂の加水分解もありますが、コバルト金属が顔料表面に化学吸着し、その触媒作用により水酸化コバルトとなって沈殿するのが主たる原因と考えられます。この防止のためには以前はドライヤとコンプレックスをつくって安定化する1,10’-フェナントロリンを添加していました。着色することから、最近では2,2’-ビピリジルの添加が奨励されています。
二次ドライヤーの鉛の代わりになる金属の探索は非常に広範囲に行われ、様々な試作配合が示されています。レアー金属にも効果が認められていますが、最終的には経済性からカルシウムやジルコニウムが選ばれるものと思われます。しかし、鉛の場合には多くの樹脂に共通した配合が見いだされるのに対して、鉛以外の金属を二次ドライヤーにした場合には共通の最適配合量は見いだせず、樹脂ごとに逐一設定する必要があります。