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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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【熱媒体】熱媒体の選定




 種々の要求特性をもとに選ぶことになりますが、まず、熱媒体の選定の前に加熱方法の選定を行う必要があります。熱媒体を気相(蒸気)で使用するか、液相で使用するかです。もし、気相での加熱を選ぶのであれば、使用温度以下の沸点をもつ熱媒体となります。この場合は、蒸気圧曲線から使用温度での蒸気圧が1~3kg/cm2となる熱媒体を選定します。液相での加熱を選択する場合は、使用温度以上の沸点をもつ熱媒体を選定するか、またはそれ以下の熱媒体では加圧条件下での使用となります。
 その次に、使用温度・条件を考えて、各種熱媒体の中から選定することとなります、使用温度の中からどのような熱媒体を選ぶべきか述べます。
 使用温度が250℃以下ならば、耐熱性を考慮する必要はあまりないと考えられることが多く、初期投資として安価な熱媒体として鉱油系あるいは重質アルキルベンゼンが選ばれることが多いです。初期投資を重視する場合はよいですが、熱安定性の面から長期的な経済性を考えるとアルキルナフタレン系あるいはアルキルビフェニル系等が望ましいです。
 使用温度が250~300℃の場合、アルキルナフタレン系あるいはアルキルビフェニル系、ジベンジルトルエン系等から選定します。
 350~400℃の場合、ジフェニルエーテル+ビフェニル系を加圧で使用することとなります。ただし、冬季の設備休止時には、配管をスチームトレースするなどして凝固させない必要があります。
 400℃以上での使用の場合は、有機系熱媒体は現実的ではないため、硝酸塩等の無機系の熱媒体を選定するほうがよいでしょう。
 熱媒体の選定には、種々の特性・要求物性以外にも重要なポイントがあります。これは、経済性、入手の容易さ及び供給安定性です。たとえば、仮に初期投資が安く済んだとしても劣化による更新(再生あるいは入れ替え)までの期間が短い、あるいは再生が不可能であれば、経済的に有利でない場合が多いです。更新時や補充等に迅速に対応できるか否か、また、選定・使用状態がよければ10年以上使用可能な場合もあり、次回の更新時にその熱媒体の供給が受けられない場合は、設備改造しなければならない可能性もあります。よって、選定した熱媒体が導入後も長期に、生産・販売されるか否かを各メーカーの背景を考え、供給安定性も選定の重要なポイントとする必要があります。

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【熱媒体】要求性能



1.熱安定性

 有機系熱媒体で、芳香族を含む系での場合は、基本骨格であるベンゼン、ナフタレン、ビフェニルやその側鎖であるアルキル基の結合を解くために必要なエネルギー(結合解離エネルギー)、鉱油系等芳香族を含まない系での場合は直鎖状部分の結合解離エネルギーに大きく左右されるため、それらの数値を見ることによって各熱媒体の熱安定性を推測することはできます。
 おおまかな使用可能期間をメーカーが示すこともありますが、あくまでも目安であり、各社の表示基準が統一されていないため、注意する必要があります。

2.比熱、熱伝導度、蒸発潜熱、蒸気圧

 大きい方が使用料が少なくて済むため、有利です。蒸気圧は、使用温度において必要な熱量を得ることができ、設備及び法的な面から許容できる圧力であることが条件となります。

3.腐食性

 装置材料に対して腐食性は、当然ない方が望ましいです。一般的に使用前の熱媒体は腐食性はありませんが、塩素を含む熱媒体は材質に注意する必要があります。また、分解物が腐食性をもつ熱媒体は劣化度合に注意が必要です。また、硝酸塩のように使用温度によっては材質の選定が異なるような熱媒体もありますので注意を要します。

4.粘度

 低い方がポンプへの負荷が少なく、有利です。鉱油系やジフェニルエーテル+ビフェニル系以外の有機系熱媒体の多くは、常温で問題になることはないので、使用温度での粘度に注意します。

5.毒性

 当然ながら腐食性同様、ない方(低い方)が望ましいです。一般にLD50(急性毒性)の値で検討されることが多く、この値は各メーカーが作成しているSDS(安全データシート)に記載されています。

6.引火点、発火点

 通常、開放系で使用されることはありませんが、一般的には引火点、発火点ともに高い方が危険性が少ないです。しかしながら、劣化によって極端に低くなるものもあるため、初期値のみでの判断は注意が必要です。また、引火点によっては、消防法での指定数量が有利になる場合があります。逆に、消防法によって使用可能な種類が限定される場合があります。

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【熱媒体】種類



1.(ビフェニル+ジフェニルエーテル)系

 有機系熱媒体の中では、一番の熱安定性をもちますが、凝固点が12℃と高いために冬季の降温を考えるt、配管等を加熱できる設備にしておく必要があります。また、ジフェニルエーテルの分解によってフェノールを生成することがあり、フェノール単体では低腐食性ではありますが、水分の存在により炭素鋼などの腐食を引き起こすことがあります。
 消防法危険物分類:指定可燃物

2.アルキルビフェニル系

 ビフェニルにアルキル器としてエチル基やイソプロピル基を1~3個付加したもので、アルキル基の数が多くなるほど沸点が上がりますが、脱アルキル化のポイントが多くなるため、耐熱性は低くなります。
 消防法危険物分類:第4類第3石油類

3.水素化トリフェニル系

 トリフェニルを一部水素添加したものであり、水素化の目的はトリフェニルの融点を下げることにあります。沸点が高く、高温液相で使いやすいです。ただし、水添コストの面から価格は、若干高くなります。
 消防法危険物分類:第4類第3石油類

4.ベンジルトルエン系およびジベンジルトルエン系

 ベンゼンの2量体、3量体であり、沸点が高く、高温での使用に適していますが、劣化に伴いアントラセン類の生成が起こるため、降温時に結晶物が出る恐れがあります。
 消防法危険物分類:第4類第3石油類および第4石油類

5.アルキルナフタレン系

 ナフタレンにアルキル基として、メチル基やイソプロピル基を1~2個付加したもので、アルキルビフェニル系と同様にアルキル基の数が多くなるほど沸点は上がりますが、脱アルキル化のポイントが多くなるため、耐熱性は低くなります。
 消防法危険物分類:第4類第3石油類

6.アルキルベンゼン系

 ベンゼンにメチル基、エチル基、イソプロピル基を付加したもので、流動点が低く、(-80℃以下)、低温域での使用にも適しており250℃程度までの気相加熱用として使用されます。
 消防法危険物分類:第4類第2石油類

7.重質アルキルベンゼン系

 アルキル基の炭素数が10以上であり、沸点(382℃)、引火点(206℃)ともに高く、安価です。しかしながら、熱安定性が乏しく、低分子化することによって、引火点の低下を起こします。また、使用条件によっては重合成分が生成し配管内でゲル状になることもあります。
 消防法危険物分類:第4類第4石油類

8.シリコン系

 難燃性で、燃焼熱も低く、化学的にも安定です。単価は高いものの臭気がないため、研究所等ではオイルバスとしてよく使用されます。ただし、空気存在か200℃以上の温度での使用はゲル化しやすいため、避けます。また、再生使用は不可能です。
 消防法危険物分類:第4類第4石油類

9.フッ素系

 きわめて不活性で、不燃性、かつ低温流動性に富みます。300℃程度までは、液相で使用可能です。ただし、非常に高価であるために工業的に使用されることはありません。
 消防法危険物分類:非該当

10.鉱油系熱媒体

 石油会社が販売しており、石油の高沸点留分を精製したものです。パラフィンとナフテンが主成分で、分子構造上での直鎖上の部分が長く、分解が起こりやすく、合成系熱媒体よりも熱安定性が劣ります。低温時の粘度が高く、冬季の設備起動時に注意を要します。ただし、臭気が少ないため、高温での使用でなければ比較的好まれます。
 消防法危険物分類:第4類第3石油類および第4石油類

11.無機系熱媒体

 無機物で構成されるため、きわめて熱安定性は高いです。硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム等の塩が使用されます。硝酸カリウムでも308℃の融点であり、取り扱いが難しいです。これを共融による融点降下の現象を利用して改良し、融点142℃(ただし、分解によって融点は上昇する)に下げたものが工業的に使用されます。これは、600℃程度まで使用可能です。ただし、空気との接触により炭酸塩が多量に発生する場合がありますが、この結晶の析出により配管を閉塞させる可能性がありますので、炭酸塩発生時には、早急に入れ替える必要があります。これ以外に、この系の熱媒体で特に注意することは、降温時に系内で固化させない工夫が必要であることと、セルロース系の有機物を混入させないことです。これら硝酸塩は強酸化物質であり、硝酸セルロース(爆薬)を生成します。
 消防法危険物分類:非該当

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