種々の要求特性をもとに選ぶことになりますが、まず、熱媒体の選定の前に加熱方法の選定を行う必要があります。熱媒体を気相(蒸気)で使用するか、液相で使用するかです。もし、気相での加熱を選ぶのであれば、使用温度以下の沸点をもつ熱媒体となります。この場合は、蒸気圧曲線から使用温度での蒸気圧が1~3kg/cm2となる熱媒体を選定します。液相での加熱を選択する場合は、使用温度以上の沸点をもつ熱媒体を選定するか、またはそれ以下の熱媒体では加圧条件下での使用となります。
その次に、使用温度・条件を考えて、各種熱媒体の中から選定することとなります、使用温度の中からどのような熱媒体を選ぶべきか述べます。
使用温度が250℃以下ならば、耐熱性を考慮する必要はあまりないと考えられることが多く、初期投資として安価な熱媒体として鉱油系あるいは重質アルキルベンゼンが選ばれることが多いです。初期投資を重視する場合はよいですが、熱安定性の面から長期的な経済性を考えるとアルキルナフタレン系あるいはアルキルビフェニル系等が望ましいです。
使用温度が250~300℃の場合、アルキルナフタレン系あるいはアルキルビフェニル系、ジベンジルトルエン系等から選定します。
350~400℃の場合、ジフェニルエーテル+ビフェニル系を加圧で使用することとなります。ただし、冬季の設備休止時には、配管をスチームトレースするなどして凝固させない必要があります。
400℃以上での使用の場合は、有機系熱媒体は現実的ではないため、硝酸塩等の無機系の熱媒体を選定するほうがよいでしょう。
熱媒体の選定には、種々の特性・要求物性以外にも重要なポイントがあります。これは、経済性、入手の容易さ及び供給安定性です。たとえば、仮に初期投資が安く済んだとしても劣化による更新(再生あるいは入れ替え)までの期間が短い、あるいは再生が不可能であれば、経済的に有利でない場合が多いです。更新時や補充等に迅速に対応できるか否か、また、選定・使用状態がよければ10年以上使用可能な場合もあり、次回の更新時にその熱媒体の供給が受けられない場合は、設備改造しなければならない可能性もあります。よって、選定した熱媒体が導入後も長期に、生産・販売されるか否かを各メーカーの背景を考え、供給安定性も選定の重要なポイントとする必要があります。