一般に有機化合物は、ある温度に達すると分解や重合が起こり始め、低沸点物質や高沸点物質の生成が始まります。さらに温度が上がることによってこれらの反応は加速度的に激しくなり、ガス成分やカーボンの生成が起こります。熱媒体も同様ではありますが、一般の有機化合物に比べて熱安定性を保てる化学構造となっています。また熱以外にも、高温で空気(酸素)に触れることによって酸化反応を起こし、劣化開始温度の低下や劣化速度の増大の原因となります。これは、不活性ガス(一般的には窒素)でシールすることによって最小限にとどめることが出来ます。
熱劣化に関しては、3段階の過程があります。
(1)一般的に使用前は、淡色透明な液体でありますが加熱によって暗色不透明になってきます。
(2)分解による低分子化された化合物の生成、重合による高分子化された化合物の生成が起こります。この段階では、低分子化合物はガスとして脱気処理できます。また、高分子化合物は熱媒体の液中に溶解しており、操業には大きな影響は与えません。
(3)高分子化合物が、炭化反応を起こしカーボンとガスの発生が起こります。これは、劣化によって生成して高沸点物(高分子化合物)が、比較的低沸点物の気化したところに残留し、熱によって炭化を促進すると考えられます。こうなると伝熱効率が悪くなり、ボイラ温度を上げなければ目的温度が得られなくなります。ボイラ温度を上げることにより炭化温度はさらに上がります。炭化が始まるとこのように操業に影響を与え、劣化度合によっては配管等の洗浄が必要になってきます。
熱および酸化以外にも、異物混入による劣化もあります。非加熱物や配管等の鉄さび、それ以外の物質が、熱媒体の中に混入することによって、熱媒体の分解・重合に対し触媒作用を起こし、劣化が促進される場合があります。また、直接熱媒体と反応して分解・重合したり、熱媒体の特性を変化させ、加熱システムが運転不能になる場合もあります。異物混入による劣化を防ぐためには、熱交換器やジャケットの割れ等の点検、熱膨張槽のオイルシール、運転開始後のフランジ部分の増し締め、修理後の溶接かす、泥等が系内に残らないように洗浄する、低沸点の洗浄油を用いた場合には最後に、使用する熱媒体と同じもので共洗いする等の十分な工場管理が必要です。