よい塗装効果を望むなら、1回塗りでは不十分で、通常下塗り―中塗り―上塗りのように2回以上塗装します。また、被塗物表面の塗装前処理(素地調整・脱脂・表面処理など)を必要とします。このような塗装工程の組み合わせを塗装系(coating system)といいます。
例えば、プライマー(primer)は素地への付着と防食を主目的とする塗料であります。サーフェーサー(surfacer)やパテ(putty)は塗面を平滑にするための中塗りであり、上塗り(top coat)には主として耐久性と美観の付与が当然要求されます。このように各種塗料はそれぞれ固有の特性を持ちます。したがって、塗装作業の前に最も適切な塗装系の設計が必要であり、塗料の種類の選択を誤ってはなりません。層間剥離(intercoat adhesion failure)・ふくれ(blister)・われ(crack, check)・変退色(discoloration, fading)その他塗装上の欠陥の対部分は、塗料の選択と塗装系の不適切さに起因すると言っても過言ではありません。
もちろん、塗装系を決めるのに重要な要因の一つは費用です。しかし、安価な塗装系にも適切と否とがあります。必ずしも高性能・高価格の塗装系が常によいとは限りません。むしろ高価な塗料を使用しながら不適切な塗装系のために、その性能を十分発揮出来ない事例の方が多いです。例えば、高価な蒸気脱脂・アルカリ洗浄あるいは硫酸エッチングより、簡便なサンドブラスト処理の方がビニル/フェノール系樹脂の付着強度が大きいことがあります。また焼付け不十分なエポキシエステル/アミノ樹脂系プライマーより、適切に焼き付けたアミノアルキドプライマーの方が性能が良好です。