合成樹脂塗料が全盛を極めている現在でも、有史前から使われてきた漆や油ワニス・ラテックスなども相変わらず使用されています。
塗料は広範囲の分野で使われていますので、たかだか数十ミクロンの塗膜に要求される性質は多種多様です。これらの要求される性質の中には互いに矛盾する性質もあります。例えば、硬い塗膜は一般にもろいです。厚塗りすればたれ(sagまたはrun)やすいです。耐水性がよければ一般に耐油性が劣ります。このようないろいろな性能を満足させることは非常に困難です。しかし、実用塗料はこれら諸性質のバランスを考え、実用的に妥協点を見出した製品になります。
塗料に要求される性質が単純なら、それを満足させるのは比較的容易です。これに反し、多種の性質を1種類の塗料に要求すれば、どの性質も中途半端にならざるを得ず、結局不満足な性能でしかも高価な塗料にならざるを得ません。したがって、塗料の需要者はまず塗料の需要者は塗料に要求する性質を絞ることに努めなければなりません。適材適所の使用を強調するのです。そこに、用途に応じた塗料の選択の妙味があります。
最後に、塗料が乾燥硬化することは単に溶剤が揮発してかたくなるだけでなく、そこには種々複雑な化学反応を伴う場合が多いです。焼付(加熱)もできない、2液形も作業が困難です。さび落とし作業も省きたい、溶剤も使用したくないなど、あらゆる手数を省いて性能優秀な仕上がりを望むのは、"木によって魚を求める"のにも似ています。
よい塗装効果を望むなら、まず材料である塗料の本質を十分理解しなければなりません。