1.熱安定性
有機系熱媒体で、芳香族を含む系での場合は、基本骨格であるベンゼン、ナフタレン、ビフェニルやその側鎖であるアルキル基の結合を解くために必要なエネルギー(結合解離エネルギー)、鉱油系等芳香族を含まない系での場合は直鎖状部分の結合解離エネルギーに大きく左右されるため、それらの数値を見ることによって各熱媒体の熱安定性を推測することはできます。
おおまかな使用可能期間をメーカーが示すこともありますが、あくまでも目安であり、各社の表示基準が統一されていないため、注意する必要があります。2.比熱、熱伝導度、蒸発潜熱、蒸気圧
大きい方が使用料が少なくて済むため、有利です。蒸気圧は、使用温度において必要な熱量を得ることができ、設備及び法的な面から許容できる圧力であることが条件となります。3.腐食性
装置材料に対して腐食性は、当然ない方が望ましいです。一般的に使用前の熱媒体は腐食性はありませんが、塩素を含む熱媒体は材質に注意する必要があります。また、分解物が腐食性をもつ熱媒体は劣化度合に注意が必要です。また、硝酸塩のように使用温度によっては材質の選定が異なるような熱媒体もありますので注意を要します。4.粘度
低い方がポンプへの負荷が少なく、有利です。鉱油系やジフェニルエーテル+ビフェニル系以外の有機系熱媒体の多くは、常温で問題になることはないので、使用温度での粘度に注意します。5.毒性
当然ながら腐食性同様、ない方(低い方)が望ましいです。一般にLD50(急性毒性)の値で検討されることが多く、この値は各メーカーが作成しているSDS(安全データシート)に記載されています。6.引火点、発火点
通常、開放系で使用されることはありませんが、一般的には引火点、発火点ともに高い方が危険性が少ないです。しかしながら、劣化によって極端に低くなるものもあるため、初期値のみでの判断は注意が必要です。また、引火点によっては、消防法での指定数量が有利になる場合があります。逆に、消防法によって使用可能な種類が限定される場合があります。