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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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よい塗装のための条件




 塗装の目的は、もちろん例外はありますが、一般に被塗物の保護と美観を与えることです。この目的すなわち塗装効果を十分に達成するためには、
 ①塗装の材料である塗料の品質(性能)が優秀(よい材料)
 ②適切な塗装系の選択(よい設計)
 ③十分な塗装作業管理(よい作業)
の三つを満足しなければなりません。
 塗料・塗装工業ばかりではなく、資源・エネルギーの節約は今や全世界的な政治問題にまでなっています。このような省資源・省エネルギーの基本的な考え方は物体の寿命を延ばし、無駄をなくすことです。無駄な生産増大の排除は直接公害防止に繋がります。換言すれば、被塗物保護と美観を長く維持することが資源の節約であり、公害防止の最重要な方策であります。
 安価であっても低級品質の塗料を使用し、不適切な塗装系の選択や塗装作業管理では、被塗物の耐用年数を縮めすぐ塗り替えなければなりません。このことは塗装作業や塗料(75%以上が石油化学製品である)を浪費するばかりでなく、環境を汚染する、その上耐用年数が短縮しますから、それだけものを多量生産しなければ成りません。高価でも性能優秀な塗料を使用することが結局は経済的なことは言うまでもありません。近年、半永久的な保護を企図するメンテナンスフリーの塗装が脚光を浴びはじめたことは当然といえます。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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塗料、塗装の無公害化について



無公害化への考え方

 最近塗料及び塗装に関する公害問題として、大気汚染、水質汚濁、臭気、廃棄物等が大きく取り上げられています。
 特に有機溶剤による環境汚染は欧米において大きな問題となり米国・ドイツ・イギリスでは厳しい法規制が打ち出されています。我が国においても大阪府等の地方自治体において規制の強化を考えています。
 またこのたび悪臭防止法が改正され、トルエン、キシレンを含めて10種の物質が追加された厳しい内容になっています。
 このような環境規制に対し。環境保全に役立つ無公害塗料または低公害塗料および塗装システムの開発が、今後の塗料メーカーの使命となっていくことでしょう。

無公害形塗料について

(1)非光学性塗料

 現在話題となっている光化学スモッグの発生要因の一つである芳香族系の炭化水素を使用しない塗料の総称であります。
 例えば、現在多方面に使用されている焼付塗料の代表メラミン―アルキド系の塗料は塗料中及び希釈シンナーにキシロール、トルオール等を含んでいますが、これらの溶剤をルール66等に規定されていない非光化学反応性のPoor Solvent に置換した溶液形の塗料や非水エマルション形塗料、非水ディスパーション形塗料と呼ばれるPoor Solvent を用いた分散型塗料がこれにあたります。

(2)高不揮発分形塗料(HNV形塗料、ハイソリッド形塗料)

 従来の一般塗料より溶剤成分を少なくし、しかも樹脂やその他の構成成分に研究を加えて、従来塗料と変わらない作業性を有するようにしたものです。
 塗膜乾燥時に排出する溶剤量を相当少なく出来るという利点と、圧膜塗装が可能になる利点があります。

(3)無溶剤形塗料(Non Solvent)

 従来一般の塗料は樹脂、顔料、溶剤を主成分として形成されています。特に最近の化学の発達により合成樹脂化が進むにつれ、光化学活性溶剤である芳香族(例えばキシロール、トルオール等)を主に使用してきましたが、塗装の合理化(ハイビルド化)及び公害対策として溶剤を使用しないで低粘度100%不揮発分樹脂を使用した塗料をいいます。
 代表的な塗料としては無溶剤形エポキシ樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、UV塗料などがあります。

(4)粉体塗料

 広い意味では無溶剤塗料であり、高分子樹脂と顔料などを混合熱練合し冷却の後粉状にした塗料で、もちろん溶剤分を全く含有していません。
 我が国でも1968年より粉体塗装が実用化段階に入り、従来の塗料形態と異なる画期的な塗料の変換とも考えられています。
 この塗料のもつ多くの利点は、1)現今の厳しい公害問題に対処するための解決手段、2)労働力不足、3)製品品質レベルアップ、に大きく貢献する塗料です。
 現在塗装法としては静電塗装を使用し、我が国ではエポキシ系、熱硬化形ポリエステル系、熱硬化形ポリエステルエポキシ系、熱硬化形アクリル系などが市販されています。

(5)水系塗料

 水系塗料には下記のような種類があります。

①エマルション系

 水に樹脂、顔料を分散させたタイプ(例えばビニール系エマルション塗料、アクリル系エマルション塗料)で溶剤を含まないので、建築用として現場塗装に適しています。

②水溶性形

 完全に水に溶解する(例えば、水溶性アルキド樹脂塗料、水溶性エポキシ樹脂塗料)で電着塗料として使用されています。

③水分散形

 コロイダルディスパーションともいわれ、その特長はエマルションと水溶性の中間程度で、性能的にバランスが取れているため、自動車用の上塗(メタリックベース)塗料に一部使用されています。

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有機溶剤の中毒予防




 有機溶剤による障害発生の順序として、付着、吸収、循環、体内蓄積および排泄があり、それらの過程のなかで障害が起こります。一番重要なことは付着であり、その付着がなければ吸収、循環、体内蓄積および排泄もなく、またそれに伴い障害の発生もありません。
 付着は有機溶剤が皮膚や粘膜に触れるか、または吸入によって呼吸器粘膜、消化器粘膜に触れることです。予防措置はこの付着や吸入をいかなる方法を用いて防止するかになります。
 塗料に用いられている各種の溶剤は、多かれ少なかれ有害性があり、その蒸気を吸入すると中毒することもあります。空気中の蒸気の濃度にもよりますが、一般にこの蒸気にさらされた場合、症状として眼や鼻など皮膚粘膜の刺激のほかに頭痛、めまいなどがあります。低濃度であっても長期間この作業を継続すると肝臓や腎臓など内臓に影響を与えることもあり、また溶剤の種類によっては血液の組成に作用するものもあります。
 一般に有害物については許容濃度が定められており、有機溶剤の場合は空気中に含まれる溶剤濃度を容量比で表し、ppmという単位を用いますが、これは百万分比のことになります。この許容濃度は溶剤の種類によって異なり、塗料のような有機溶剤を含有したものを取り扱う作業場では、その含有された有機溶剤の許容濃度以下で管理するよう勧告されています。
 対策としては、第一に容器などのふたをしてできるだけ蒸気を発生させないようにすることです。第二に作業場は窓などを開放して通風をよくする。第三に窓の少ない作業場やタンク内など通風のないところでは、換気設備による換気をする。第四に換気のできない場所や換気の不十分な場所では、その濃度に応じて規格に合格している防毒マスクを使用し、特に重度の場所ではホースマスクを用いて絶えず新しい空気を呼吸できるよう万全の処置をして作業をする必要があります。
 また、常時このような作業に従事している者は、定期的に尿や血液の特殊健康診断を行い、異常が発見された場合には治療その他の対策を早期に実施します。次に酔ったような急性中毒症状が発生した場合は、直ちに新鮮な空気の場所に移し、頭を低くして寝かせ、早く医師の診断を受けさせます。
 有機溶剤は皮膚の脂肪を溶かしてその抵抗力を弱め、また皮膚から体内に吸収されることもありますので、塗装作業に従事する前に保護クリームを用いたり、常時洗い作業に従事する者は保護手袋を用いることが大切です。
 また、塗料に用いられている顔料には鉛化合物などがあり、有機溶剤と同様の取り扱いが必要です。

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