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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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表面張力とその変化



被塗装物表面を塗料が分子オーダーで濡らすために重要な要素は表面張力です。塗料の表面張力が被塗物表面の表面張力よりも大きいとミクロな濡れを達成するのは難しくなります。
 古くから塗料原料に用いられてきたものは油です。油は分子量がそれほど高くないので流動しやすく、表面張力が多くの被塗装物を濡らしやすいレベルにあり、顔料分散にも、塗装作業にも都合の良い性質を持った材料でした。そのため、極端に言えば、技術者は如何に高分子化するかを工夫するだけで塗料化できました。その延長線上にある有機溶剤可溶型の塗料が長い間塗料界の主役として君臨してきたのは、まさに使いやすく高性能の塗装系を構築しやすかったからであり、自然なことでありました。
 塗料の表面張力は塗装のプロセスを通じて常に一定に保たれているわけではありません。温度変化、溶剤濃度変化、塗料成分、特に添加剤の配向及び重合反応の進行によって、塗料の表面張力は時々刻々と変化します。この表面張力変化に揺らぎが発生すると、塗膜の仕上がり性に深刻な影響を及ぼすことがあります。
 Marwedelは123種に及ぶ溶剤の密度、粘度及び表面張力の温度依存性を測定し、さらに樹脂溶液の表面張力の濃度依存性データを公表しています。
 新規な化合物の場合でも、パラコールの概念を用いると、表面張力の値を計算で求めることができ、ポリマーやコポリマーの表面張力設計を行いたいときに便利です。
 塗料は重力によって低い方へ流れるだけではありません。塗料の内部にも流動を起こす要因が潜んでいます。大きな密度差が塗膜を流動させる内的な力になるほか、表面張力差に起因するマランゴニ応力は塗膜内流動の重要な駆動力になります。通常の塗膜厚の世界では、マランゴニ応力が支配的です。塗料の表面張力は溶剤濃度、温度などによって変化するため、溶剤蒸発過程では表面張力の揺らぎから発生するマランゴニ流動が定常的に継続し、マランゴニ対流となる場合も多いです。光輝性塗料がこの対流に乗ると光輝性顔料は流れを可視化するトレーサーとしての役割を果たし、塗装ムラに発展します。
 シリコーン油などの表面偏析特性を利用した塗膜乾燥過程での表面張力コントロールが可能であり、マランゴニ対流抑制に利用されます。

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レオロジーコントロール技術



よい仕上がりを得るためには、塗料は各工程において、それぞれの段階に相応しい粘度レベルになければなりませんが、前エントリで概観しました基本原理で決まる粘度が、必ずしも各段階で要求される適正粘度にならない場合が多いです。そのずれを克服するのがレオロジーコントロール技術になります。車ボディの垂直面において、水平面同様の高平滑面を得ようとすると、レベリングとたれの防止を両立させなければならず、とりわけ高度なレオロジーコントロール技術が要求されます。塗料は塗布乾燥工程を通じて様々なせん断速度環境に晒されますので、多くのレオロジーコントロール剤は、せん断速度に依存した塗液内3次元網目構造の解消ー生成現象を利用しています。

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塗料の粘度を支配するもの



塗装の全プロセスを通じて、塗料の流動性コントロールは一貫して重要な課題です。
 ミクロには、塗料の構成要素が分子オーダーで相対位置を変えることが流動になります。分子または分子中の運動単位(セグメント)が相対位置を変えるためには、移動できる隙間が必要です。みかけの体積と分子の実体積の差を自由体積と呼び、この自由体積の大きさが流動しやすさと密接に関係しています。分子末端は分子のつながりが切れる場所であり、自由体積を大きくします。低分子物質になるほど、分子末端の分率が高くなるため、自由体積が大きくなります。分子量の低い溶剤で希釈すると粘度が低いのはこのためです。逆にモノマー→オリゴマー→ポリマーと分子が大きくなり高分子化すると自由体積が減少し、粘度は増大します。
 Dolittle式あるいはWLF式を利用すると、溶液粘度に対する溶剤粘度、濃度及び温度などの効果を自由体積あるいはTgという概念を介して統一的に扱うことができます。
 WLF式を用いると、ある温度Tにおける粘度の値からその液体のTgが計算可能であり、逆にそのTgをパラメータとして他の任意の温度における粘度が計算することができます。
 Tgの高分子構造依存性、分子量依存性、共重合組成依存性あるいは溶液濃度依存性などに関して多くの知見が蓄積されており、それらを塗装プロセスにおける塗料の粘度挙動の予測に利用しない手はありません。

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