保護の対象として最も大きいのは鉄鋼です。鋼材の腐食を軽減するのが防食塗料の役割です。
塗料による防食の機構は次のように説明されています。一つには、水、酸素、塩類などの腐食に関与する物質を塗膜により遮断し、鋼材の表面まで到達させないことです。もう一つは、塗膜中の防食顔料により表面を腐食しない化合物に変える(不動態化)方法です。さらに、塗膜成分が犠牲陽極となり鉄を保護する防食塗料もあります。ジンクリッチペイントには多量の亜鉛粉末が入っており、鉄よりも亜鉛の方がイオン化傾向が大きく酸化されやすいために亜鉛の酸化が進行して鉄は腐食されません。
コンクリートは空気中の水、炭酸ガス、二酸化硫黄などによって劣化します。コンクリートの中性化が進むと機械的強度が低下するとともに、コンクリート中の鉄筋が腐食します。塗料はコンクリート中への大気成分の侵入を防止し、コンクリートの劣化を防止し、コンクリートの保護に役立っています。
木材は光、酸素、水などによる腐食のほかに、微生物、昆虫などの生物による腐食・食害も受けます。生物による腐食を防止するためには防かび材、防虫剤などを含有した塗料を用います。
塗膜が劣化して保護機能が低下した場合には、塗り替えることによって機能を回復させることができます。汚染、退色などで美粧性が低下した場合でも塗り替えにより快適環境が再生可能です。塗り替え可能であるということは、塗料の大きな特長であります。塗り替え周期は要求される性能とコストとのバランスで決められます。例えば、東京タワーは5年周期で塗り替えており、東京スカイツリーは25年周期の塗り替えを想定しています。