塗膜への多くの要求特性を1種類の塗膜層で達成することは困難な場合も多く、通常異なる性質の塗料の塗り重ねが行われます。塗り重ねられるそれぞれの塗膜は役割を分担しており、多層膜全体で総合的に塗装の目的を達成します。
目的に応じて、中塗り塗料あるいは中塗りと下塗り塗料が省略されることがあります。これらの場合には、上塗り塗料が中塗りあるいは中塗りと下塗りの役割も受け持つことになります。また一回の塗装で必要な膜厚が得られない場合には、同種の塗料が複数回塗り重ねられます。
ほとんどの場合に被塗装物は塗装前処理されます。その目的は、被塗装面の清浄化、塗膜と被塗装物との付着性の向上、防食、平滑化などになります。被塗装物に割れ、へこみなどのある場合にはパテにより平滑な表面にします。
下塗り塗料はプライマーとも呼ばれ、その塗膜は防食と付着性の向上が主な役割です。そのほか、木材、コンクリートなどの多孔性の被塗装物には、孔をふさぐ機能を持つフィラーと呼ばれる塗料を下塗りして表面を平滑にします。また、これらの材料からは、ヤニやアルカリが溶出してくるので、シーラーと呼ばれる塗料を下塗りして、それらの溶出を防ぐことも行われます。
中塗り塗膜は被塗装物表面の平滑化、下塗りと上塗り塗料の付着性の向上、丈夫な物性による外力からの保護、水、酸素、イオンなどの腐食物質のバリヤーが主な役割です。平滑化を主な目的とする場合はサーフェーサーと呼ばれます。
上塗り塗膜は美粧と耐久性の付与が主な役割です。そのために着色、光沢、耐傷付き性のための硬度、耐汚染性、耐候性などが要求されます。