この塗料はポリウレタンの特徴を最も発揮する代表的なポリウレタン樹脂塗料で、バイエル社のデスモジュール/デスモーヘン (Desmodur/Desmophen) 系塗料がそれであり、その組合せからD/Dラッカーと称されるものになります。 この塗料はポリイソシアネートプレポリマーと、ポリエステルポリオール、アクリルポリオールなどが別々の容器に保管されており、使用時に所定の割合に調合するものになります。この型の塗料ではポリイソシアネートプレポリマーの選択の自由度が小さいので、ポリエステルポリオール側で性質の調整を行うのが普通です。硬化機構がイソシアネート基と水酸基との反応を主体とする塗料であるため、ポリエステルなどの水酸基価が重要な特性値となります。すなわち水酸基価の高い樹脂はポリエステル一分子中の水酸基数が多くなって架橋密度も高くなり、硬質塗膜を形成します。反対に低いものは架橋密度の低い軟質の塗膜となります。また、ポリオールの種類により塗膜性能が異なり、一般にポリエステル系は有機溶剤に強く、ポリエーテル系はアルカリや水に強く、アクリル系は速乾性で耐汚染性に優れています。この塗料は室温で効果をするため、特に加熱の必要はありませんが、効果を早めるために触媒を加えると、比較的低温で素早く硬化します。
触媒としては、
a)アミン系 トリエチルアミン ジメチルエタノールアミン メチルジメタノールアミン
b)有機錫系 オクチル酸錫 ジブチルスズラウレート
等があります。またポリイソシアネートとして芳香族イソシアネートプレポリマー(TDI付加物)を用いたものは、乾燥性は早いですが、黄変性があり、早期に光沢が減少してしまいます。
これに対し脂肪族ポリイソシアネートプレポリマー(HMDI付加物など)を用いたものは乾燥性は遅いですが、非黄変性で耐候性が極めて良く、光沢保持率もよいものになります。
このポリオール硬化型は、湿気に敏感でない水酸基含有成分のポリエステルポリオールに顔料を混入するため、エナメル化が湿気硬化型比べて容易である利点があります。
しかし、使用する溶剤については、ほかのポリウレタン樹脂塗料と同様にその選択が重要で、NCO基と反応しないように水分を含んでいない溶剤や、また、水酸基を持たない溶剤を使用することが大切になります。したがって、アルコール系溶剤は不適当です。この塗膜の性能は、一般的に耐水性、耐薬品性、耐溶剤性、耐摩耗性、耐久性などに優れています。この塗料の用途はその組成配合により各種の被塗物に用いられており、木材用塗料として木工製品、床材の塗装に、また、コンクリート、石材、瓦などの塗装、船舶、化学工場などの防食塗装、さらには自動車補修塗装や皮革類の塗装等にも用いられています。
建築外装分野の高耐久性が要求される塗料として、2液アクリルウレタン樹脂塗料が使用されています。その中で、シロキサンセグメントをグラフト化したシリコーン・アクリルポリオールを利用した塗料が注目され、高耐候性に加えて耐汚染性に極めて優れることが報告されています。さらに、超耐候性塗料として、フッ素系ポリオールとイソシアネート誘導体とからなるフッ素系ウレタン樹脂塗料があります。耐候性は極めて優れており、沖縄での曝露においても光沢低下はほとんど認められません。