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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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有機溶剤の中毒予防




 有機溶剤による障害発生の順序として、付着、吸収、循環、体内蓄積および排泄があり、それらの過程のなかで障害が起こります。一番重要なことは付着であり、その付着がなければ吸収、循環、体内蓄積および排泄もなく、またそれに伴い障害の発生もありません。
 付着は有機溶剤が皮膚や粘膜に触れるか、または吸入によって呼吸器粘膜、消化器粘膜に触れることです。予防措置はこの付着や吸入をいかなる方法を用いて防止するかになります。
 塗料に用いられている各種の溶剤は、多かれ少なかれ有害性があり、その蒸気を吸入すると中毒することもあります。空気中の蒸気の濃度にもよりますが、一般にこの蒸気にさらされた場合、症状として眼や鼻など皮膚粘膜の刺激のほかに頭痛、めまいなどがあります。低濃度であっても長期間この作業を継続すると肝臓や腎臓など内臓に影響を与えることもあり、また溶剤の種類によっては血液の組成に作用するものもあります。
 一般に有害物については許容濃度が定められており、有機溶剤の場合は空気中に含まれる溶剤濃度を容量比で表し、ppmという単位を用いますが、これは百万分比のことになります。この許容濃度は溶剤の種類によって異なり、塗料のような有機溶剤を含有したものを取り扱う作業場では、その含有された有機溶剤の許容濃度以下で管理するよう勧告されています。
 対策としては、第一に容器などのふたをしてできるだけ蒸気を発生させないようにすることです。第二に作業場は窓などを開放して通風をよくする。第三に窓の少ない作業場やタンク内など通風のないところでは、換気設備による換気をする。第四に換気のできない場所や換気の不十分な場所では、その濃度に応じて規格に合格している防毒マスクを使用し、特に重度の場所ではホースマスクを用いて絶えず新しい空気を呼吸できるよう万全の処置をして作業をする必要があります。
 また、常時このような作業に従事している者は、定期的に尿や血液の特殊健康診断を行い、異常が発見された場合には治療その他の対策を早期に実施します。次に酔ったような急性中毒症状が発生した場合は、直ちに新鮮な空気の場所に移し、頭を低くして寝かせ、早く医師の診断を受けさせます。
 有機溶剤は皮膚の脂肪を溶かしてその抵抗力を弱め、また皮膚から体内に吸収されることもありますので、塗装作業に従事する前に保護クリームを用いたり、常時洗い作業に従事する者は保護手袋を用いることが大切です。
 また、塗料に用いられている顔料には鉛化合物などがあり、有機溶剤と同様の取り扱いが必要です。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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