生産設備からの大気汚染物質の排出は、一般的には煙突などの排出口から排出されるものがほとんどでありますが、排出口を持たず、窓、開放部から排出される場合もあります。各発生施設とその排出物を表に示します。また、主な発生施設の特徴は次のとおりになります。
ボイラーから発生する汚染物質は燃料の種類に大きく依存し、石炭→重油→灯油→都市ガスの順にばいじん濃度、二酸化硫黄(SO
2)濃度は低減します。ボイラーは多くの事業所で使用されており、固定発生源の中で圧倒的に数が多いです。
ごみ焼却炉は、一般的には家庭より排出される廃棄物を焼却する一般廃棄物焼却炉と事業系の廃棄物を焼却する産業廃棄物焼却炉に大別されます。
汚泥焼却炉は、排水処理に伴い発生する余剰汚泥を焼却する炉です。水分が多いため重油などの補助燃料が必要で、汚泥中に窒素分が多く一酸化二窒素(N
2O)が比較的高濃度で排出されます。
小型焼却炉は炉温が低く、高温での持続時間も短いことから不完全燃焼となる場合が多くダイオキシン類の発生が多いです。
溶鉱炉は、鉱石を還元して金属(鉄、銅、鉛など)を精錬する炉です。炉は密閉式で、鉄の場合の発生ガスは一酸化炭素20~22%、水素2~4%を含んでおり高炉ガスとして燃料に利用されます。
コークス炉は多数の炭化室と燃焼室を交互に並べ、高炉ガスとコークス炉ガスを燃料として炭化室の石炭を加熱乾留します。乾留により発生するガスがコークス炉ガスで、水素50~54%、メタン30~33%を含んでいます。
電気炉は廃材の鉄などを炉内に投入し、炭素電極を通じてアーク放電させることにより鉄を融かしてインゴットをつくります。電気が通る瞬間に高濃度のばいじんおよび窒素酸化物が発生します。
セメントキルンは回転型の炉で、1450℃という高温で原料を焼成するため窒素酸化物(NOx)濃度が高いです。
塗装施設で使われる塗料には顔料、樹脂、溶剤などが含まれますが、塗料乾燥時に溶剤が大気中に放出されます。印刷施設で使われるインキの溶剤は塗装施設で使われるものに類似していますが、水性化が進んでいるインキではアルコール類が排出されます。
洗浄施設はめっきなどの金属表面処理を行う工程で、有機塩素系の脱脂剤が使われています。大事業所においては回収装置を付設しているものもありますが、多くの施設においては排ガス処理装置は付設されていません。
表.大気汚染物質の発生施設と主な排出物
発生施設 | 排ガス中の主な大気汚染物質 |
ボイラー | ばいじん、二酸化硫黄(SO2)、窒素酸化物(NOx)、 一酸化炭素(CO)、炭化水素類 |
ごみ焼却炉 | ばいじん、窒素酸化物(NOx)、塩化水素(HCl)、 一酸化炭素(CO)、炭化水素類、ダイオキシン類 |
汚泥焼却炉 | ばいじん、窒素酸化物(NOx)、炭化水素類。一酸化炭素(CO)、 一酸化二窒素(N2O) |
産業廃棄物焼却炉 | ばいじん、二酸化硫黄(SO2)、窒素酸化物(NOx)、 一酸化炭素(CO)、炭化水素類、塩化水素(HCl)、ダイオキシン類 |
小型焼却炉 | ばいじん、一酸化炭素(CO)、炭化水素類、ダイオキシン類 |
溶鉱炉 | 一酸化炭素(CO)、水素(H2) |
コークス炉 | ばいじん、水素(H2)、メタン(CH4)、二酸化硫黄(SO2)、 一酸化炭素(CO)、揮発性有機化合物(ベンゼン等) |
電気炉 | ばいじん、窒素酸化物(NOx) |
セメントキルン | ばいじん、窒素酸化物(NOx) |
塗装施設 | トルエン、キシレン、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン等の 有機溶剤 |
印刷施設 | トルエン、キシレン、酢酸エチル等の有機溶剤、 イソプロピルアルコール(水性インキ) |
洗浄施設 | ジクロロメタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の 有機塩素系溶剤 |
給油所 | 燃料ガス |
クリーニング施設 | テトラクロロエチレン、n-デカン、石油系ターベン |