ガス吸収は、ガス中の特定成分を水、水溶液などの液体に吸収させて分離する操作で、有害物質、特定物質などの処理に用いられます。
ガスの水への溶解は、水に対して比較的溶けにくいガス(例:酸素、窒素、一酸化炭素)の場合、よく知られたヘンリーの法則が成立します。
P=HC
P:溶解ガスの分圧(Pa)
C:溶解ガスの液中の濃度(mol/㎥)
H:ヘンリー定数(Pa・㎥/mol)
比較的溶けやすいガス(例:アンモニア、塩化水素)では、ヘンリーの法則は成立しません。しかし、これらのガスでも分圧が低い場合には近似的にヘンリーの法則に従うとみることができます。逆に、難溶性ガスでも、全圧および分圧が高い場合には従わなくなります。ヘンリー定数は、一般には温度が高いほど大きくなります。
吸収液とガスとの間に化学反応を伴う場合の吸収を化学吸収といい、化学反応を伴わない吸収を物理吸収と呼びます。化学反応が不可逆であるとき、例えばフッ化水素の水酸化ナトリウム水溶液への吸収では、ガスの平衡分圧はゼロとしてよいのですが、可逆的であるとき、例えば二酸化硫黄(SO
2)の亜硫酸ナトリウム水溶液への吸収では、液組成や温度などで決まる一定の分圧を示します。
ガス吸収の速度を考える場合、二重境膜説は有力な学説であります。気相と液相の接する液面に沿ってガス側にも液側にも乱れのない薄い境膜が形成され、この境膜内での被吸収物質の拡散速度は遅いので物質移動の抵抗となります。この境膜内の拡散の推進力はガス本体と界面の被吸着物質の分圧の差、および界面と液本体の溶質の濃度差であります。溶解度の大きいガスの場合はガス側抵抗が支配的となるので液分散型の吸収装置が、溶解度の小さいガスの場合は液側抵抗が支配的となるのでガス分散型の吸収装置が用いられます。
表.ガス吸収装置の特徴
| 特徴 |
長所 | ①処理コストが低廉である。 ②集じん、ガスの冷却などほかの操作を兼ねることができる。 |
短所 | ①100%近い除去率を得ることは難しい。 ②付帯的な排水処理施設が必要である。 ③ガスの増湿を伴うので、排煙の拡散が阻害される。 ④汚染物質を溶解した吸収液が酸性となる場合は腐食性が問題と なる。 |