ある特定の環境条件に対して敏感に特異的な反応を示す生物を指標生物と言います。川や海の環境に対しては主に魚類等の動物が用いられますが、陸上の環境に対しては主に植物が用いられます。植物指標による手法は汚染度の表現が定性的~半定量的であり、理化学的原理による濃度測定器のような大気汚染物質の濃度の定量的な評価は困難です。しかしながら、広域にわたり連続的かつ長期間の環境汚染の現状や進行などを把握することができ、複合汚染を全体として評価し、さらに指標植物の持つ選択性によって汚染物質の種類も区別しうるという利点があります。
表に代表的な汚染物質と指標植物の組み合わせを示します。
下の表に加えて、PAN(パーオキシアセチルナイトレート)については、ペチュニアやフダンソウ、エチレンについてはカトレアの萼のしおれ、ゴマのつぼみの落下、きゅうりの花の変化などの現象が利用されています。
一方、被害の軽減防除対策として、都市や工業地帯において、大気汚染物質に対して抵抗性の強い樹種の植栽が検討されています。
《大気汚染物質に対する植物指標》
感受性が強い(抵抗性の弱い)植物 | 感受性の弱い(抵抗性の強い)植物 |
①SO2に対して ●アルファルファ ●コスモス ●オオムギ ●スイートピー ●ワタ ●インゲンマメ等 ●ライ麦 ②ふっ化水素に対して ●グラジオラス ●チューリップ ●アンズ ●サクラ ●ソバ ●カラマツ等 ●コケモモ ③オゾンに対して ●タバコ ●インゲンマメ ●アルファルファ ●クローバー ●オオムギ ●トウモロコシ等
| ①SO2に対して ●グラジオラス ●キク ●バラ ●カンキツ類 ●セロリ ●マスクメロン等 ●ヒョウタン ②ふっ化水素に対して ●ワタ ●キャベツ ●タバコ ●ニセアカシア ●セロリ ●タンポポ ●キュウリ ●モミ等 ●カボチャ ③オゾンに対して ●ハッカ ●イチョウ ●ゼラニュウム ●ヒノキ ●スギ ●クロマツ ●グラジオラス ●クスノキ等 |
《年や工業団地の植栽に敵する樹種》
【上層構成木(高さ10m以上になるもの)】
〈常緑広葉樹〉
タイサンボク、ゲッケイジュ、モチノキ、クロガネモチ、クスノキ、
カナメモチ、スダジイ、ヤブツバキ、シロダモ、ヤブニッケイ、
マテバシイ、サカキ、モッコク
〈針葉樹〉
カヤノキ、イヌマキ、アスナロ、ドイツトウヒ、ヒノキ
〈落葉広葉樹〉
ポプラ、イチョウ、プラタナス、アオギリ、シダレヤナギ、トウカエデ、
【中層構成木(高さ5m以上10m未満のもの)】
〈常緑広葉樹〉
ウバメガシ、ネズミモチ、トウネズミモチ、サンゴジュ、カクレミノ、
サザンカ
〈針葉樹〉
カイズカイブキ、イブキ
〈落葉広葉樹〉
エンジュ、オオシマザクラ、サトザクラ、ザクロ
【下層構成木(高さ5m未満のもの)】
〈常緑広葉樹〉
ハマヒカサキ、オトメツバキ、ヒイラギモクセイ、キョウチクトウ、
オオムラサキツツジ、ヤツデ、ナワシログミ、ヒイラギ、ヒサカキ、
イヌツゲ、チヤ、アオキ、ジンチョウゲ、アベリア、アセビ、トベラ
〈針葉樹〉
ハイネズ
〈落葉広葉樹〉
チョウセンレンギョウ、コリヤナギ、イボタノキ
〈特殊樹〉
ワジュロ、トウジュロ、ユッカ、ソテツ、ドラセナ、フェニックス