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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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【熱媒体】使用上の注意点




 熱媒体の使用装置系内の挿入に関しては、昇温により体積膨張しますので装入量は余裕を持つ必要があります。
 また、プラント建設時に、漏れ等チェックするため、水運転するケースが多いですが、装置系内に水分や空気、分解低沸点物が存在すると、装置の立ち上げ(昇温)時に突沸や圧力異常を示し、棄権であると共に、熱媒体の劣化を促進します。昇温時、100℃前後で一旦ホールドし、水分を除きます。そのために、装置の上部に膨張槽を設け、脱気、脱水の操作ができるようにするとよいでしょう。また、酸化劣化を防止するために窒素などで不活性ガスシールします。
 定常運転を行う際、定期的に温度と蒸気圧を測定し、蒸気圧曲線から外れてくれば、ガス抜きを行い、温度と蒸気圧の関係を正常に保ちます。
 長時間の設備停止(定修等)時に注意しなければならないことは、凝固点の高い熱媒体を使用している場合に配管等を保温し固化しないようにするか、配管内の熱媒体をすべて貯槽等に抜き落とし、凝固に備えることです。

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【熱媒体】熱媒体の選定




 種々の要求特性をもとに選ぶことになりますが、まず、熱媒体の選定の前に加熱方法の選定を行う必要があります。熱媒体を気相(蒸気)で使用するか、液相で使用するかです。もし、気相での加熱を選ぶのであれば、使用温度以下の沸点をもつ熱媒体となります。この場合は、蒸気圧曲線から使用温度での蒸気圧が1~3kg/cm2となる熱媒体を選定します。液相での加熱を選択する場合は、使用温度以上の沸点をもつ熱媒体を選定するか、またはそれ以下の熱媒体では加圧条件下での使用となります。
 その次に、使用温度・条件を考えて、各種熱媒体の中から選定することとなります、使用温度の中からどのような熱媒体を選ぶべきか述べます。
 使用温度が250℃以下ならば、耐熱性を考慮する必要はあまりないと考えられることが多く、初期投資として安価な熱媒体として鉱油系あるいは重質アルキルベンゼンが選ばれることが多いです。初期投資を重視する場合はよいですが、熱安定性の面から長期的な経済性を考えるとアルキルナフタレン系あるいはアルキルビフェニル系等が望ましいです。
 使用温度が250~300℃の場合、アルキルナフタレン系あるいはアルキルビフェニル系、ジベンジルトルエン系等から選定します。
 350~400℃の場合、ジフェニルエーテル+ビフェニル系を加圧で使用することとなります。ただし、冬季の設備休止時には、配管をスチームトレースするなどして凝固させない必要があります。
 400℃以上での使用の場合は、有機系熱媒体は現実的ではないため、硝酸塩等の無機系の熱媒体を選定するほうがよいでしょう。
 熱媒体の選定には、種々の特性・要求物性以外にも重要なポイントがあります。これは、経済性、入手の容易さ及び供給安定性です。たとえば、仮に初期投資が安く済んだとしても劣化による更新(再生あるいは入れ替え)までの期間が短い、あるいは再生が不可能であれば、経済的に有利でない場合が多いです。更新時や補充等に迅速に対応できるか否か、また、選定・使用状態がよければ10年以上使用可能な場合もあり、次回の更新時にその熱媒体の供給が受けられない場合は、設備改造しなければならない可能性もあります。よって、選定した熱媒体が導入後も長期に、生産・販売されるか否かを各メーカーの背景を考え、供給安定性も選定の重要なポイントとする必要があります。

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【熱媒体】要求性能



1.熱安定性

 有機系熱媒体で、芳香族を含む系での場合は、基本骨格であるベンゼン、ナフタレン、ビフェニルやその側鎖であるアルキル基の結合を解くために必要なエネルギー(結合解離エネルギー)、鉱油系等芳香族を含まない系での場合は直鎖状部分の結合解離エネルギーに大きく左右されるため、それらの数値を見ることによって各熱媒体の熱安定性を推測することはできます。
 おおまかな使用可能期間をメーカーが示すこともありますが、あくまでも目安であり、各社の表示基準が統一されていないため、注意する必要があります。

2.比熱、熱伝導度、蒸発潜熱、蒸気圧

 大きい方が使用料が少なくて済むため、有利です。蒸気圧は、使用温度において必要な熱量を得ることができ、設備及び法的な面から許容できる圧力であることが条件となります。

3.腐食性

 装置材料に対して腐食性は、当然ない方が望ましいです。一般的に使用前の熱媒体は腐食性はありませんが、塩素を含む熱媒体は材質に注意する必要があります。また、分解物が腐食性をもつ熱媒体は劣化度合に注意が必要です。また、硝酸塩のように使用温度によっては材質の選定が異なるような熱媒体もありますので注意を要します。

4.粘度

 低い方がポンプへの負荷が少なく、有利です。鉱油系やジフェニルエーテル+ビフェニル系以外の有機系熱媒体の多くは、常温で問題になることはないので、使用温度での粘度に注意します。

5.毒性

 当然ながら腐食性同様、ない方(低い方)が望ましいです。一般にLD50(急性毒性)の値で検討されることが多く、この値は各メーカーが作成しているSDS(安全データシート)に記載されています。

6.引火点、発火点

 通常、開放系で使用されることはありませんが、一般的には引火点、発火点ともに高い方が危険性が少ないです。しかしながら、劣化によって極端に低くなるものもあるため、初期値のみでの判断は注意が必要です。また、引火点によっては、消防法での指定数量が有利になる場合があります。逆に、消防法によって使用可能な種類が限定される場合があります。

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