超高速回転機の代表例としてガスタービンがあり、自動車用などのガスタービンが開発されてきました。ガスタービン発電機は、回転子の超高周速に対処するため、回転子に界磁巻線をもたない、くし形磁極のクローボール回転子構造を採用しています。軸受は、超高速回転機の最重要課題の一つであります。これまでに超高速回転機用としてジェット給油式ころがり軸受、セラミック気体軸受、および磁気軸受が開発されてきました。以下にその概要を紹介します。
●ころがり軸受
クローボール発電機用軸受として、最初にジェット給油式ころがり軸受が採用されました。この発電機では、回転子の振動が極めて大きくなる危険速度を超えて定格回転に到達する必要があります。しかし、ころがり軸受単体では振動を減衰させる効果が少なく、この危険速度を超えることができません。そこで、軸受スリーブと軸受ハウジングの間に潤滑油を注入して、スクイズフィルムによる振動減衰効果を利用した高信頼性超高速回転ジェット給油式ころがり軸受(dmn値2,000,000)を開発し、実用化されています。●気体軸受
密閉型発電および電動機駆動システムの清浄運転、極低温から高温までの使用温度範囲拡大を目的に、従来の油潤滑ころがり軸受に代わって、システムの作動媒体を潤滑剤とした動圧型気体軸受が開発されました。
超高速運転時には、温度上昇や遠心力による変形が無視できないため、これらを十分に考慮した設計を行い、高速安定性を図っています。また、動圧型気体軸受は起動・停止時に軸と軸受が接触するため、摺動面の損傷が問題となり高荷重化が困難でした。そこで、軸受および軸材については、摩耗評価試験を行い、優れた特性が確認されたセラミックス製軸受および超硬合金をコーティングした軸を採用して、高荷重化を実現しました。偏心支持パッドジャーナル軸受およびスパイラル溝付きスラスト軸受により、ジャーナル軸受荷重8kgf(軸径70mmΦ)、スラスト軸受荷重16kgf(スラスト外形100mmΦ)の条件下で50,000rpmを達成することができました。●磁気軸受
これまで紹介してきた軸受は、軸を非接触な状態に保つために、油や空気などの潤滑剤を不可欠としました。しかしながら、磁気軸受は磁気力を利用し、これを制御して軸を浮上させるので潤滑媒体を必要としません。このため、気体軸受と同様にシステムの作動媒体中での清浄運転が可能であるばかりでなく、軸受隙間を大きくできることから、一層の低損失化が図れます。また、真空条件での使用など適用範囲が広いため、特殊用途の高速回転機用として、磁気軸受は開発されてきました。
能動型磁気軸受は超高速回転体に適用でき、ロータのアンバランス、危険速度やジャイロ効果などを考慮した電子制御技術が重要となります。また、一般に磁気軸受の作用点と変位検出点とが軸方向に異なるため、回転軸の振動モードによっては制御が発散し、その結果、弾性モードの危険速度での共振現象を生じることがあります。これを解決するためには、高精度な回転軸系の振動解析を行い、磁気軸受と変位検出センサの位置決めを行っています。
試作した5軸制御型磁気軸受装置では、ラジアル軸受荷重9.5kgf、軸径70mmΦで40,000rpmを達成しています。また、0~40,000rpmの範囲で回転軸と軸振動の関係を調べた結果、40,000rpmで約3μmp-pと高速回転領域で非常に安定であり、全体的にも低振動を実現していることがわかっています。