【粘度特性】
●活性化体積(ΔV*)
粘性流動に関するEyringの理論における活性化体積(ΔV*:分子の粘性流動に必要な空孔の大きさに対応)と潤滑性の相関が認められています。ΔV*をその分子のモル体積(V)で割ったΔV*/Vを潤滑性の目安とすると、その値は、n-パラフィン系で0.15~0.09、ジエステル系で0.06~0.04、ポリオールエステル系で0.05~0.03となります。すなわち、ポリオールエステルのように分岐構造のエステルであってもエステル基の-C-O-C結合が比較的フレキシブルであるため、分子の節片ごとの移動に対して障害にならず、ΔV*/Vは小さく、良好な潤滑性を示します。●圧力-粘度係数
油の粘度は圧力の上昇に伴って増加しますが、ポリオールエステルの粘度変化は小さいです。このような油の粘度の圧力依存性は一般に次式で表されます。
η=η0exp(β・P)
粘度の圧力計数(β)は、パラフィン系鉱油1.7~1.8、ナフテン系鉱油2.2~2.3に対して、ポリオールエステルは1.45~1.55(✕10^-3cm^2/kg,37.8℃)であり、かなり低くなっています。
このように鉱油は圧力上昇による粘度増加が急激であり、動力損失を伴いますが、ポリオールエステルは粘度上昇が極めて小さく、広い圧力範囲で流体潤滑を行い得ると考えられ、潤滑エネルギーを低減できる省エネルギー型潤滑油であるとみなすことができます。●配合特性
化学的性質の異なる成分を混合すると良好な粘度-温度特性を示すことがしられています。エステル油と鉱油との1:1配合油の粘度特性を粘度指数向上効果(ΔVI)で評価すると、粘度指数の低い鉱油はポリオールエステル(分枝構造)、ジエステル(直鎖構造)とのいずれの配合においても高いΔVIを示しています。単一化合物との配合を検討すると、コンパクトな構造を持つ分子(テトラリン、メチルナフタレン)や直鎖構造のオクタデカンは分枝構造のポリオールエステルの粘度指数を向上させますが、(30%配合によりVI118からのΔVIは11~29となる)直鎖状のジエステルに対してはΔVIの効果を与えません。
さらにまた、鉱油との配合においては、潤滑性の向上も見出されています。