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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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ポリオールエステルの応用:金属加工油、グリース、繊維油剤、熱媒体



●金属加工油

 金属を高速圧延処理する場合の圧延油として部分エステル化ポリオールエステルが検討されました。このエステルは所定の圧下率において、圧延油の延びがよいために高速圧延でも油膜切れを起こさず、圧延エネルギーを減少させることができるのです。
 熱間圧延において、圧下率40%時の圧延荷重は、鉱油の5.8~6.3tに対して、ポリオールエステルは4.3~4.7tを示し、鉱油使用時の約7割のエネルギーで圧延が可能だといわれています。そのほか、ポリオールエステルは鋼板表面の被覆さび止め剤やプレス加工潤滑油としても用いられます。

●グリース

 ポリオールエステルを基材とするグリースは高温安定性や低温特性が要求される分野で使用されます。現在、低揮発性、低温流動性、のコンプレックスエステル(トリメチロールプロバン、二塩基酸、一塩基酸から合成)が検討されています。

●繊維油剤

 合成繊維の紡糸工程の高温高速化、省力化に対応するために、発煙性、タール化、着色性の少ない油剤が要望されており、ポリオールエステル、コンプレックスエステルなどが検討されています。

●熱媒体

 最近、中低温排熱(例えば250℃)を利用した油・フロン排熱利用発電システムが開発されつつありますが、そこでフロンと反応しにくい耐フロン性の油が要請されています。ポリオールエステルはフロンと反応を起こしにくい性質があります。

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ポリオールエステルの応用:空気圧縮機油、難燃性作動油



●空気圧縮機油

 空気圧縮機油に関連する火災や爆発事故の40%は、潤滑油が高温高圧の空気と温接触により激しく酸化され、その結果生成したカーボン状物質が吐出弁や吐出配管に堆積することが原因となっています。鉱油系圧縮機油ではカーボン状物質を皆無にすることはできません。
 空気圧縮機油の酸化安定性とカーボン化傾向を同時に評価できる示差熱-熱天秤法が提案され、この方法による"発熱開始温度"が酸化安定性、"10%減量温度"が引火点、"ピークⅡ残炭量"がカーボン化傾向と強く相関していますが、ポリオールエステルはこれらのいずれの値においても優れた結果を示しています。
 さらにまた、大型圧縮機に対してISO VG32級の比較的高粘度のポリオールエステルを用いると更油に比べて1~2%の動力消費節減効果が得られています。

●難燃性作動油

 油圧装置の精密化、自動化により高性能かつ難燃性の作動油が要求されています。ポリオールエステルは鉱油やリン酸エステルよりも高い引火点、燃焼点を有し、優れた酸化安定性や粘度指数を示すため、難燃性の合成作動油として以前から米国、西欧、日本などで鉱油系、リン酸エステル系の市場分野で使用されてきました。ポリオールエステルは鉱油と比較して高温時の着火遅れ時間が長く、延焼速度も遅く、油中にスラッジも生成しません。また、粘度指数が高いためにポリマー系粘度指数向上剤を必要としないため、粘度低下現象を示さず、長期使用が可能となり、使用温度範囲が広くなるといわれています。
 ポリオールエステルはゴムシール材(特にニトリルゴム)に対して影響を与えず、油圧タンクにさび止め塗装される塗料材料に対してフェノール樹脂以外は塗膜に変化を与えません。

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ポリオールエステルの応用:自動車エンジン油



●油消費量

 ポリオールエステルは弱い会合性があることから、蒸発性が低く、粘度が低いにもかかわらず、蒸発損失は同一粘度級のほかの合成潤滑油と比較して格段に小さいです。そしてまた低揮発性で高粘度の鉱油にポリオールエステルを混合して粘土を調節する場合に、同一粘度の鉱油のみのエンジン油と比較して蒸発損失を減らすことができます。

●更油期間

 エンジン油の長寿命化に関わる重要な性能は熱酸化安定性であり、この点でポリオールエステルは優れた性能を示します。たとえば、各種のエンジンテストにおいてポリオールエステルを18%混合した半合成系は同じ添加剤組成系の鉱油系と比較して良好な結果を示し、ポリオールエステル基油の合成潤滑油はダブルランのシークエンスⅢCテストの粘度変化値がSE級に達していました。
 さらにまた、エンジン清浄性がロングドレインかに寄与する大きな因子でありますが、ペッターW1とペッターAV1のエンジン試験においてジエステルより優れていました。

●燃費節減

 米国連邦政府による企業燃費節減目標の設定に見られるように、自動車産業に対して省エネルギー要請が高まり、省エネルギー型エンジン油の展開が必須となってきました。そのため潤滑油の低粘度化と摩擦特性の改善により燃費を節減しようとする努力が払われています。ポリオールエステルは低揮発性、低粘性により摩擦損失を低減化するとともに、ΔV*/V値が鉱油やジエステル油に比べて小さく潤滑性が優れているばかりではなく、高圧下の摩擦面でも低粘度を保持しており、(β値が小さい)燃費節減に大きく貢献することが考えられます。
 1976年から発売されていた合成エンジン油(合成炭化水素:ポリオールエステル=3:1、SE/CC級)は、当時米国、欧州において各種のマルチグレード油に比べて約5%の燃費節減効果を示していました。

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