塗料はこれまで、ものの価値を損なわず長期的に使用するための手法の一つとして用いられてきました。土や木材が主要な素材であった時代には、神社仏閣などの建造物や、食器、箱などの日用品に漆喰や漆を塗ることで素材に耐久性を与えつつ生活に潤いを持たせてきました。その後、産業革命以降の急速な工業化によって鉄鋼中心とする金属素材の使用が広がり、これを保護する防食塗料や意匠性を与える上塗り塗料が発展してきました。さらに、化学技術の発展に伴い原油を原料とする合成樹脂が開発され、耐久氏や意匠性のさらなる要求もあいまって、塗料も多様化、多量使用の時代に入り順調に発展してまいりました。とりわけ、金属素材においては、鉄やアルミニウムを中心に塗装技術の発達に伴い工業塗装化が進められてきました。近年では新しい機能の付与といった要素も加わり、塗料(塗膜)への期待はさらに高まっています。高度な耐久性能や意匠性に応えるために、これまでの塗料(塗装)技術は有機溶剤の利用を中心に行われてきました。これは有機溶剤が低価格で、樹脂の溶解力、素材へ塗り広がる表面張力の調整、造膜過程での乾燥の早さと均一化などの機能を備える好材料であったことによります。しかしながら、一方で塗料の使用量が増えるにしたがって、副次的に発生する大気へのVOCの排出量が増加してきていることも間違いなく、塗料面、塗装面、後処理などの装置面をも含めた総合的な検討によりVOCの排出を低減できる塗料、塗装システムの採用が必要になりました。