【問題】
素地調整と防錆塗膜の耐久性との関係について述べなさい。
【解答例】
鋼構造物の防錆塗装において、被塗面の錆落としの程度により防錆塗膜の耐久性は定まるといっても良いくらいに素地調整は重要な工程であるし、高度の素地調整をすればするほど防錆塗膜の耐久性は延長する。なかには、不完全な素地調整のため予期せぬ早期発錆事故を招くことになりかねないので注意が必要である。また、いかなる防錆塗装でも素地調整を十分に行えば行うほど、塗膜の耐久性は向上する。
素地調整の方法としては、大別して、ブラストによる方法・動力工具による方法、手工具による方法、化学薬品による方法と分類され、それにあった塗料で防錆塗膜の耐久性が変わってくる。
ジンクリッチペイントはブラスト処理の場合は優れた防錆効果を示すが、動力工具による2種ケレンでは、その防錆効果が急激に低下する。むしろ油性系の方が優れた防錆性を示す。つまり、素地調整の程度と防錆塗料との適応性を概念的に知っておく必要がある。
また、素地の表面粗さも防錆塗膜の耐久性に関係してくる。素地調整を行うことにより、被塗物表面が清浄化されると同時に、塗膜の付着性に必要な表面粗さを得られる利点があるが、必要以上に被塗面が粗いと、その粗さを埋めるのに消費される塗料の量が多くなり、膜厚不足の箇所も生じ、早期錆発生の原因になりやすい。一般に表面粗さが大きいと、そこに塗装された塗料の膜厚にばらつきが生じやすい。しかも、同一塗料において塗布量、塗装回数が同じであれば、表面粗さが大きくなるほど塗膜の耐久性は減少する結果が得られている。
素地調整のグレードアップをするとイニシャルコストは上昇するが、耐用年数は長くなり、結果的にはランニングコストは安くなるので経済的である。