電磁波シールドとは、金属のような高い導電性や透磁性を持つ面によって、その両側の空間やものを電磁気的に絶縁することです。
電子機器類は産業分野では不可欠なものであり、最近は家庭にも普及してきていますが、電子機器から外部に漏れるごくわずかの電流や電磁波が、他の電子機器の制御機構に対してノイズとして働いて誤動作を起こすことが問題となっています。この問題は、電子機器の高性能化と小型化が進むにつれてますます深刻化してゆくものであるだけに、効率や快適面だけでなく安全の面からも見過ごすことのできない課題です。
電磁波障害対策の基本はノイズを発生しない電子機器を設計することであります。このためノイズ源となりやすいプリント基板やスイッチを板金でカバーするなどの方法がとられていますが、微少の電流や電磁波が外部に漏れるのを完全に防ぐことはできません。
電子機器全体を金属でカバーする方法は有効です。しかし現在ではむしろ、軽量化、低コスト化、デザイン性の向上などが優先されて、電磁波に対して全く無防備であるプラスチック化が進められています。このため、プラスチックを導電化して電磁波障害対策を立てることが必要になってきました。
プラスチックを導電化する各種工法はそれぞれに一長一短はありますが、この中で使用されているものはコーティング法が多いです。
電磁波シールド塗料は、多量のニッケル、銀、銅などの金属や合金粉末からなる導電性フィラーを、少量のアクリル樹脂やポリウレタン樹脂などのビヒクルに分散したもので、10^-5~10^0Ω-cm程度の高導電性塗膜を形成するものであります。銀系が最もシールド効果が大きいのですが、高価になります。ニッケル系が価格と性能がのバランスが良いので多く使用されています。
この塗料は複雑な形状のものでも、はけやスプレーで簡単に塗装できる特長を持つ反面、高比重の導電性フィラーを多く配合しているため、沈降しやすく、塗装ムラが生じやすいです。この点の改良が望まれます。
鉛や亜鉛の溶射膜も効果があります。前者はシールド効果が極めて良いのですが製品の重量がかなり増加してしまいます。また両者とも、プラスチックとの付着性が劣る致命的な欠点があるため、塗料にかわられつつあります。
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