糸状腐食とは、濃淡電池腐食の一種で、塗膜下の金属面に糸状に進行する腐食をいいます。塗膜による環境遮断効果が弱い薄膜の場合に生じやすいです。
素地が鉄の場合、糸状さびの先端のふくれを生じた箇所は青色のさび(2価鉄イオン)を形成し、アノード反応が始まっている状態を示します。ふくれの後方部分はふくれ形成後腐食に十分な水分、酸素が供給され、安定な褐色の3価鉄腐食生成物(Fe2O3・nH2Oなど)が生成されカソードになります。これらの間に局部電池が形成され、その電位差は約0.2mVであり0.3mVを超えることはないことがW.H.Slabaughらにより測定されています。先端は常にアノードになり、腐食進行に見合う水分や酸素も比較的容易に供給されているため次々に局部電池が先端側に移動し、一方向に選択的にふくれが進行して糸状を呈します。膜厚が厚い場合や水分が非常に多い環境では同じ原理の腐食でも通常の丸いふくれ現象になりやすい傾向にあります。
関連用語:塗膜下腐食