このようなラジカル反応の場合、これを阻害する物質があれば硬化は進まなくなってしまいます。この阻害物質としては空気中の酸素、水分、一部の着色剤、フェノール分、木材の樹脂分などがあります。したがって、これらの阻害物質が塗料中に入ったり、接触しないように注意すべきです。
例えば、酸素の場合には、生成したラジカルがスチレンモノマーや樹脂の重合性二重結合に付加重合する速度よりも酸素に付加する方が速いため、塗膜の表面は3次元架橋構造をとらず、粘着性を帯び、乾燥を阻害します。このような空気中の酸素の影響を除くためと、スチレンモノマーの揮発を防ぐため、塗料用ポリエステル樹脂には微量のパラフィンワックス類が入っており、塗膜の表面に浮いて空気を遮断するようにしてあります。
ノンワックス型と称するものは、ワックスを入れなくての乾燥するもので空気乾燥性不飽和ポリエステル樹脂塗料になります。すなわち樹脂中にポリオールのアリルエーテル化合物、テトラヒドロ無水フタル酸などを使用し、硬化時に酸素による硬化阻害を受けないような樹脂が開発され上市されています。アリルエーテル基の空気硬化性は、エーテル酸素を樹脂中に持つことにあって、空気中の酸素によって自動酸化を受け生じたラジカルにより連鎖反応を開始し硬化します。塗膜形成後のつや出し研磨の必要性もなく、工程短縮を図ることもできます。