塗料を乾燥させるときに、加熱炉等で加温して乾燥することにより塗膜を形成する操作を焼付けといいます。焼付け塗料は、主に自動車、家電製品などの工業製品に利用されていますが、塗膜形成時硬化反応を行う熱硬化性塗料と反応を伴わず熱溶融して塗膜を形成する熱可塑性塗料があります。熱硬化性塗料は、塗膜形成時に架橋(橋かけ)反応が起こり、密着性、強じん性や耐候性等の物性が改善されて品質の安定した塗膜が得られます。一方、熱可塑性塗料としては、ホットメルト形塗料(例:粉体塗料)やプラスチックゾル塗料などが挙げられます。
焼付けは乾燥時間が短縮できるほか、品質管理も容易であるという特徴があります。反面、乾燥炉は被塗装品のサイズ、形状によっては大型のものが必要となるため、設備コストが大きくなる欠点があります。乾燥炉の形式は、一般に熱風乾燥炉や赤外線照射炉などが用いられます。排ガス出口には有害物除去のために排ガス処理装置が設置されます。
代表的な焼付け塗料としては、アルキドメラミン樹脂塗料、熱硬化性アクリル樹脂塗料、粉体塗料などがあり、おのおのに定められた焼付け条件(温度:80~200℃、時間:15~30分)で乾燥されます。
焼付け塗料の分類
1.樹脂による分類~熱硬化性樹脂を用いた焼付け塗料(ベース樹脂+硬化剤、触媒)
1-1.硬化の仕組み~縮合反応(アルキド樹脂、アクリル樹脂)
アルキド樹脂またはアルキド樹脂の水酸基とアミノ樹脂のメチロール基が反応し、塗膜を形成する。
1-2.硬化の仕組み~付加反応(エポキシ樹脂、ウレタン樹脂)
エポキシ樹脂はアミン、酸などと付加反応する。
ウレタン樹脂はポリオールの水酸基がイソシアネート基(NCO)と反応する。
2.樹脂による分類~熱可塑性樹脂を用いた焼付け塗料(ベース樹脂、高重合度の微粉末(塩ビペースト樹脂など)、可塑剤)
2-1.硬化の仕組み~加熱冷却による塗膜形成
樹脂が熱溶融し、冷却によって塗膜になる(熱可塑性粉体塗料)。
2-2.硬化の仕組み~ゲル化反応
加熱によって粉末樹脂が可塑剤と膨潤し、ゲル化し固化する。
この過程で若干の反応を伴う場合もある(プラスチックゾル塗料)。