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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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エポキシ樹脂塗料(epoxy resin coating)




 エポキシ樹脂をバインダーとする塗料をエポキシ樹脂塗料といいます。バインダーとなるエポキシ樹脂の多くはビスフェノールAとエピクロロヒドリンを反応させて合成されたものになります。エポキシ樹脂の分子中には、反応性に富んだ2個のエポキシ基と水酸基を含んでいるので官能基を持った硬化剤と縮合重合して三次元構造を有する強靭な塗膜を形成します。塗料用に用いられるのは主として分子量1,000~2,500の固形樹脂になります。硬化剤としては酸無水物、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、アミンアダクト、尿素樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート化合物などが用いられます。エポキシ樹脂塗料は耐水性、耐薬品性が極めてよく、また硬化収縮が少なく、靭性が優れるなど多くのすぐれた特徴を有する反面、耐候性が悪く、黄変、白亜化などの劣化を起こしやすいです。
 エポキシ樹脂塗料には以下のようなものがあります。
 1)常温硬化型エポキシ樹脂塗料
  硬化剤として脂肪族アミン、ダイマー酸とアミンを反応させたポリアミド、大過剰のアミンの
  存在下でエポキシ樹脂を初期重合させたアミンアダクトを用いる二液型塗料。付着性、可とう
  性、靭性に優れ、防食下塗りとして金属の塗装に用いられる。
 2)エポキシエステル樹脂塗料
  エポキシ樹脂を脂肪酸で変性したもので、脂肪酸変性することで樹脂の表面張力を低くし、
  塗装作業性を向上させている。乾性油脂肪酸変性し常温硬化形としての使用も可能であるが、
  多くは飽和あるいは不飽和脂肪酸変性し、メラミン樹脂を混合して160℃30分程度の焼き付け形
  として使用される。付着性、耐薬品性に優れ、金属塗装に用いられる。
 3)エポキシ・フェノール樹脂塗料
  エポキシ樹脂とレゾール形フェノール樹脂を混合したもので、フェノール樹脂の水酸基、
  メチロール基とエポキシ樹脂のエポキシ基、水酸基間の反応、フェノール樹脂の自己縮合に
  より硬化するもので、180~220℃で焼き付け硬化する。付着性が優れ、硬度が高く、耐薬品
  性の優れた塗膜となる。缶内面塗装、耐薬品性用途に用いられる。
 4)電着塗料
  エポキシ樹脂の水系塗料で代表的なものがカチオン形電着塗料である。自動車の下塗りと
  して広く用いられている。エポキシ樹脂にカチオン性を付与するためにアミンで変性し、
  酢酸、酪酸などで中和することにより水分散型樹脂とする。効果にはブロックイソシア
  ネートを用いる。電着した塗膜は170~180℃で30分程度加熱して硬化させる。
 5)粉体塗料
  エポキシの固形樹脂を用い、ジフェニルジアミノメタン、ジフェニルジアミノスルホンの
  ような芳香族アミン、無水トリメリット酸のような酸無水物、ジシアンジアミド、あるいは
  カルボン酸を含有するポリエステル樹脂などと混合して用いる。160~220℃で焼き付け、
  成膜、硬化させる。建材、家庭電化製品などの塗装に用いる。

関連用語:粉体塗装粉体塗料電着塗料

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糸状腐食(filiform corrosion)



糸状腐食とは、濃淡電池腐食の一種で、塗膜下の金属面に糸状に進行する腐食をいいます。塗膜による環境遮断効果が弱い薄膜の場合に生じやすいです。
 素地が鉄の場合、糸状さびの先端のふくれを生じた箇所は青色のさび(2価鉄イオン)を形成し、アノード反応が始まっている状態を示します。ふくれの後方部分はふくれ形成後腐食に十分な水分、酸素が供給され、安定な褐色の3価鉄腐食生成物(Fe2O3・nH2Oなど)が生成されカソードになります。これらの間に局部電池が形成され、その電位差は約0.2mVであり0.3mVを超えることはないことがW.H.Slabaughらにより測定されています。先端は常にアノードになり、腐食進行に見合う水分や酸素も比較的容易に供給されているため次々に局部電池が先端側に移動し、一方向に選択的にふくれが進行して糸状を呈します。膜厚が厚い場合や水分が非常に多い環境では同じ原理の腐食でも通常の丸いふくれ現象になりやすい傾向にあります。

関連用語:塗膜下腐食

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塗膜下腐食(under film corrosion)



塗膜下腐食とは、塗膜の下で起こる腐食をいいます。Funkeは塗膜下腐食によるさびやふくれの発生機構について以下のように説明しています。

〈ⅰ〉水蒸気(水分)と酸素が塗膜を通過する。酸素の透過速度は水に比べて遅い。塗膜と鋼材界面に水分層が形成される。
〈ⅱ〉塗膜下の鋼材上に局部電池が形成され、アノードではFe2+、カソードではOH-がそれぞれ生成される。Fe2+とOH-により水酸化鉄が生成し、沈殿する。2価の鉄化合物は塗膜を透過した酸素によって容易に3価に変化する。
〈ⅲ〉塗膜下に形成されたさび層により酸素透過が抑制され、アノードに変化し、水の浸透によりふくれが発生する。
〈ⅳ〉カソードで生成したOH-とアノードから拡散してきたFe2+が反応し、カソードにさびが形成されるとともにふくれが成長する。

 なお、塗膜のふくれは塗膜下腐食以外に浸透圧や塗膜の膨潤によっても発生すると言われています。



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