シリコーン樹脂塗料は、シロキサン結合(Si-O-Si)からなる主鎖のSiにメチル基(-CH3)やフェニル基(-C6H5)などの基が側鎖として結合した構造を持ったシリコーン樹脂の塗料です。
炭素(C)原子の共有結合半径が0.077nmに対して、シリコン(Si)は0.117nmで大きく、またシリコン(Si)原子の電気陰性度が炭素原子の2.5、酸素(O)原子の3.5に比べて1.8と小さく、正電荷を帯びやすいという特徴があります。これらのことにより、シリコーンは炭素系のエーテルと以下の点で性質を異にしています。
・Si-O-Si結合は柔軟性、反発弾性に富んでいる。
・Si-O結合がC-C結合やC-O結合に比べて高い結合エネルギーを有している。このため、耐熱性、
耐酸化性に優れている。
・Si-O-Si結合はしなやかな結合で、比較的大きな振幅で熱振動を行うので分子運動範囲が大きく
なり、隣の分子をあまり寄せ付けない。その結果としてシリコーンの分子間引力は小さくなり、
表面張力が他の液体と比べて特異的に小さい。
これらのシリコーンの特性をうまく利用した塗料として、耐熱塗料及び高耐候性塗料があります。ここでは耐候性塗料について記述します。
1)シリコーン変性アルキド樹脂塗料
一般にはアルコキシシリル基あるいはシラノール基をもつシリコーン中間体と水酸基を有する
アルキド樹脂の縮合反応により合成された樹脂を用いた塗料になります。
この塗料は、1液の酸化重合反応型であり、塗膜は平滑で光沢が非常に高く、耐候性は長油及び
中油アルキド樹脂塗料に比べて良好です。
主な用途としては、屋外タンク、橋梁などの重防食塗料に用いられていましたが、次第に需要
は減りつつあります。
2)シリコーン変性アクリル樹脂塗料
一般にはアルコキシシリル基あるいはシラノール基を持つシリコーン中間体と水酸基を有する
アクリル樹脂の縮合反応により合成された樹脂を用いた塗料です。
この塗料は、ポリイソシアネート化合物を硬化剤とする2液の常温硬化型であり、硬化反応性に
優れ、均一な架橋塗膜が得られますので、建築外装用の高耐候性塗料として用いられ、フッ素樹脂
塗料にせまる耐候性を有します。
3)アルコキシシリル基を有するアクリル樹脂塗料
一般的には側鎖にアルコキシシリル基を有するアクリル共重合体の樹脂を用いた塗料です。
この塗料は、アルコキシシリル基が触媒の存在下、空気中の水分で加水分解してシラノール基
を生成し、さらにシラノール基同士あるいはシラノール基とアルコキシシリルとの縮合反応により
シロキサン結合を形成して三次元架橋し、塗膜を形成します。この反応で生成するシロキサン結合
は結合エネルギーが大きく安定であるので、この塗膜は耐候性及び耐酸性に優れています。