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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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粉体塗装(powder coating)




 粉体塗装の塗装方法は、静電塗装法と流動浸漬塗装法の2つに大別されます。

《静電塗装法》
 静電塗装法は粉体塗料に静電気を帯電させて被塗物に付着させる塗装方法で、その後の焼付工程で塗膜を形成させます。
 静電塗装法は、塗料を帯電させる方法によって、さらにコロナ帯電法と摩擦帯電法に分けられます。
 コロナ帯電法は、塗装ガンの先端のコロナ電極(コロナピン)に高電圧(-45kV~-100kV)を印加することで発生するイオンによって粉体塗料をマイナスに帯電させる方法であり、最も一般的な塗装方法になります。
 摩擦帯電法は、ガン内部にテフロン筒を設け、粉体塗料がテフロン筒と擦れることで帯電序列に従ってプラスに帯電させる方法になります。摩擦帯電法は塗料のみを帯電させるため、貫入性(複雑な形状物内部への入り込み性)や塗装外観がよく、近年増えている塗装法であります。

《流動浸漬法》
 流動浸漬法は、粉体塗料をエアーで流動させた槽の中に被塗物を浸漬し、熱溶融または帯電によって付着させる塗装法で、その後焼付工程で塗膜を形成させます。流動浸漬法には予熱流動浸漬法と静電流動浸漬法があります。
 予熱流動浸漬法は、被塗物をあらかじめ熱しておき、流動塗料槽に浸漬する方法であり、非常に厚い塗膜を形成させることができます。ただし、本法は浸漬中に塗料が被塗物上で溶融する必要があるため、熱容量の大きな被塗物でないと適用できない方法になります。
 静電流動浸漬法は、流動槽内の電極で塗料を帯電させ、浸漬した被塗物に粉体塗料を付着させる方法になります。ただし、膜厚コントロールなどの問題があり、一般的ではありません。

 粉体塗料の塗装方法の中で、最も一般的に利用されているのは静電塗装法になります。

関連用語:粉体塗料

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電着塗料(electrodepsition paint)




 電着塗料は電気めっきによく似た電着塗装という独特の塗装方法で塗装される水系の塗料になります。この電着塗装という塗装方法は、水溶性あるいは水分散性塗料を満たした塗料槽(電着槽といいます)内に金属製の被塗装物を浸漬し、槽内に別に設けた電極との間に直流電圧を印加するすることで被塗物表面に塗膜形成成分を析出させ、不溶性の塗膜を形成する塗装方法になります。この塗膜形成は、被塗装物表面で水の電気分解が生じることで表面近傍のpHが変化し、水中に溶解あるいは分散していた塗膜形成成分が凝集、堆積することで起こります。この電着塗装法は、被塗物の形状に関係なく均一な膜厚の塗膜が形成できる、ボックス内などの袋構造部の内面にも塗装できる(「付きまわり」がよい)、塗料の利用効率(塗着効率)が高い、塗装工程をシステム化しやすい(省人化できる)、等の利点があり、自動車車体など多くの工業製品の塗装に利用されています。
 電着塗料には、塗膜形成成分が正に帯電したカチオン型電着塗料と負に帯電したアニオン型電着塗料があります。
《カチオン型電着塗料》
 一般的な電着塗料で、自動車車体など多くの工業製品の下塗り塗料として利用されています。代表的な基本樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂をポリエーテルやポリエステル、ポリアミドなどで可塑変性し、アミン化合物で分子中に多数のアミノ基を導入したポリアミン樹脂で、酢酸などの低分子有機酸で中和して水に分散させています。エポキシ樹脂は分子量1000前後のものが使用され、アミンは酸中和して樹脂に親水性を付与するために用いられています。大部分のアミノ基は3級アミンとしてじゅしちゅうにそんざいし、その量はアミン価で45~85程度になります。硬化剤には、トリレンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソジアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などのポリイソシアネートのアルコールブロック体が主に利用されますが、その使用形態は樹脂に組み込まれて使用される場合があり、使用量は全樹脂固形分の20~30%程度になります。また、水溶性樹脂や界面活性剤などが基本樹脂や顔料の分散安定剤として使用され、水溶性アルコールやケトン類の溶剤が樹脂の分散安定性化や電着塗装性の調整のために使用されます。
《アニオン型電着塗料》
 アニオン型電着塗料は1963年に米国フォード社の自動車工場で最初に採用されて電着塗料で、かつては工業製品の塗装に広く用いられました。しかし、1970年後半以降、自動車車体のさび発生が問題になり、耐食性に優れるカチオン型電着塗料に取って代わられました。今ではアニオン型電着塗料の使用は少なくなりましたが、アルミサッシなどのように、被塗装物素材にマイナスの電圧を印加すると表面酸化物皮膜に悪影響が生じやすい場合には、今なおアニオン型が主流として利用されています。アルミサッシ用には、例えば、水分散性のアクリル樹脂と水溶性のメラミン樹脂を主体とする水分散型のアクリルメラミン樹脂系の塗料が用いられ、透明あるいは半透明の塗膜が形成されます。この場合、メラミン樹脂の配合量は全樹脂固形分に対して20~40%程度、アクリル樹脂は分子量が数万、水酸基価が50~150、酸価が30~80程度のものが一般的に用いられています。

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硬化(curing)




 硬化とは、JIS K 5500(2000)「塗料用語」によれば「塗料を、熱又は化学的手段で縮合・重合させる工程。求める性能の塗膜が得られる。」と定義されています。縮合・重合は化学反応であり、反応を促進させるための条件の一つとして温度が重要であり、それを硬化温度といいます。焼付塗料の場合、各々の塗料に定められた温度や時間などの焼付条件を守らないと乾燥不良やオーバーベイクとなり塗膜不良の原因となります。また、硬化剤を用いる常温乾燥形の多液塗料も、定められた温度で塗装・乾燥を行わないと反応が進みません。特に防錆塗装でよく用いられるアミン硬化型のエポキシ樹脂塗料は低温での硬化性が悪いので注意が必要になります。

表.焼付塗料の標準的な焼付乾燥条件
塗 料焼付乾燥条件
アミノアルキド樹脂塗料120~130℃×20分
アクリル樹脂塗料150~170℃×20分
水溶性塗料130~150℃×20分
ウレタン樹脂塗料160℃×20分
ふっ素樹脂塗料(分散形)230℃×10分
ふっ素樹脂塗料(溶剤型)160℃×20分
エポキシ樹脂塗料(アミノ樹脂硬化形)180~200℃×30分
エポキシ樹脂塗料(フェノール樹脂硬化形)120~200℃×30分 

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