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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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碁盤目試験(cross-scoring test, cross-cut test)



塗膜の付着性を評価する方法の一つ。
 JIS K 5600-5-6(1999)「塗料一般試験方法―第5部:塗膜の機械的性質―第6節:付着性(クロスカット法)(ISO 2409)」に規定されていて、碁盤目状に素地に達する傷を入れた塗膜を、セロハン粘着テープの粘着力を用いて強制はく離させることにより、塗膜の素地への付着性および塗膜の層間付着性を評価します。
 JISに「この方法を付着性の測定手段とみなしてはならない」と記述されているように、あくまで付着性の良否を判定する定性的試験方法になります。
 カットの間隔は、膜厚および素材によってことなり、
   0~60μm  :硬い素地の場合1mm間隔
   0~60μm  :軟らかい素地の場合2mm間隔
   61~120μm :硬い、軟らかい素地の両方とも2mm間隔
   121~250μm :硬い、軟らかい素地の両方とも3mm間隔
の縦横5×5=25ますのクロスカットを行います。
 試験結果は0~5に分類され、評価します。


 重防食塗装系のような厚膜や無機ジンクリッチペイントを含む塗装系での評価では、JIS規格にある、1~3mm間隔を用いると、クロスカット時に発生する応力により付着力とは関係なく塗膜が欠落する場合があるため、JISには規定されていませんが、5mm間隔の縦横3×3=9ますのクロスカットで試験を行うことが適しています。
 JIS G 3312(2008)「塗装溶融亜鉛めっき鋼板および鋼帯」、JIS G 3318(2008)「塗装溶融亜鉛ー5%アルミニウムめっき鋼板および鋼帯」、ASATM D 3359 ”Standard Methods for MEASURING ADHESION BY TAPE TEST” などでは1mm間隔の縦横10×10=100ますのクロスカットを行う方法が規定されています。
 碁盤目試験は、テープによるはく離であるため、斜め方向にはく離の力が働くので、塗膜には垂直引張力とせん断力も同時に受けることになります。したがって、塗膜の付着力とともに靭性(脆性)も評価することになります。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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工場塗装(shop coating)




 塗装作業は、被塗物がその場所に構築された状態で行われる現場塗装と、製作工場あるいは塗装工場内で行われる工場塗装に大別されます。さらに工場塗装には、被塗物が前処理・塗装・乾燥などの各ステージに順次コンベアで運ばれながら生産されるライン塗装があります。ライン塗装の場合、被塗物の形状・重量に適した設備が必要となりますが、定型のものを大量に塗装する場合は効率が良いです。
 現場塗装は、工場塗装と比較して気象条件に左右されやすく塗料やシンナーの飛散に対する対策が必要になるなどの短所があります。一方工場塗装は、被塗物の形状・生産量に合わせた場所・設備が必要であり、現地架設後の部分補修塗装が必要といった短所があります。
 鋼構造物の防食塗装の場合、被塗物が比較的大きく、形状も多種多様である場合が多く、一部を除きライン塗装には向きません。橋梁などの場合、従来は工場で下塗りまで塗装し、現地建設終了後中・上塗りを塗装することが主流でありましたが、鋼道路橋塗装・防食便覧(㈳日本道路協会 平成17年12月)によれば、新設橋梁の場合には「工場塗装した塗膜と現地塗装した塗膜の塗膜間での付着力の低下を防ぎ、均質で良好な塗膜を形成させるため、塗装は上塗りまで橋梁製作工場で塗装する全工場塗装とする」との記載があり、現在では全工場塗装が主流となっています。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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粉体塗料(powdered paint)




 粉体塗料とは、塗料中に有機溶剤や水などの溶媒を含まず、塗膜形成成分のみが配合されている粉末状塗料になります。粉体塗料は、合成樹脂と顔料を中心に、必要に応じて硬化剤、添加剤、フィラーなどを配合し、均一に加熱混錬して分散体を作成し、冷却後所定の粒度まで微粉砕、分級して製造されます。
 その利用目的としては、従来の液状塗料と同様、美装用(外観、色調など)や保護用(防錆、耐薬品など)で、工業用塗料として広く利用されています。
 粉体塗料の塗装方法は、従来の液状塗料と大きく異なる方法で、塗料の供給、搬送、及び塗装に空気(加圧空気)を利用して、静電塗装法や流動浸漬法と呼ばれる独特の方法で塗装が行われます。
 粉体塗料は、一般的な液状塗料や塗装に対して次のような利点があります。
1)有機溶剤を含んでいない(無溶剤)
 粉体塗料は無溶剤塗料であるため、塗料の製造時や使用時における溶剤揮発が原因となる公害(大気汚染など)の発生や有機溶剤による中毒(衛生問題)、溶剤引火により火災の危険性(消防や災害関係)等が回避できる塗料になります。また、水性塗料のような排水の問題もなく、人と環境にやさしい塗料になります。
2)高性能な塗膜が得られる
 一般に、樹脂は分子量が大きくなるほど、その制度(強度、耐薬品性など)が向上しますが、樹脂が高分子量化すると有機溶剤などに溶解しにくくなるため、従来の液状塗料では高分子量の樹脂は利用できませんでした。
 粉体塗料は、樹脂を溶剤に溶解させる必要がないため、高分子量の樹脂が使用できることから、その樹脂のもつ優れた塗膜性能を得ることができます。
3)厚塗りが容易
 粉体塗料は、焼付時の塗料溶融粘度が高いため、一回の塗装で厚膜(50~100μm)が得られます。また、被塗物をあらかじめ熱しておく流動浸漬塗装法を採用すれば高厚膜(300~2,000μm)の塗装も可能です。
4)塗料の損失が少ない
 粉体塗料は、塗装工程で被塗物に塗着しなかった塗料を回収して再利用できるため、塗料損失が少なくなり省資源といえます。
5)塗装作業性に優れる
 粉体塗料は、液状塗料に比べて塗装の自動化が容易であり、生産性向上、取扱作業の省力化が可能になります。

 粉体塗料は、基体樹脂と硬化剤によってさまざまな特徴を持ったものが使用されますが、大別して、エポキシ系、ポリエステル系、アクリル系の3種類に分けられます。なお、その中には、エポキシーポリエステル系やアクリルーポリエステル系などの複合系(ハイブリッドタイプ)も利用されますが、それらは、各々の系の中間的塗膜性能を持つものになります。最近では、新しい樹脂系としてふっ素系も市場導入されています。

関連用語:粉体塗装

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