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塗装技術の門

塗装・塗料をはじめとした内容を掲載したブログです。工業に携わる皆さまの調べものにお役に立ちたいと思っています。

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JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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鉛系さび止め塗料(anticorrosive paints based on lead pigment)




 鉛系さび止め塗料は最も古くから使われているさび止め塗料で、使用する顔料により、JIS K 5623(2002)「亜酸化鉛さび止めペイント」、廃止JIS K 5624(2002)「塩基性クロム酸鉛さび止めペイント」、廃止JIS K 5622(2002)「鉛丹さび止めペイント」があります。さらに、ビヒクルの種類によって、次のように分けて呼びます。
 JIS1種タイプ:ボイル油をビヒクルとしたもの(油性系)
 JIS2種タイプ:フタル酸樹脂ワニスをビヒクルとしたもの(合成樹脂系)
 さび止め効果はJIS1種タイプの方が良好であるといわれていたが、近年の配合技術の向上により、防さび性はJIS2種タイプと同等であるとの報告がなされています。塗膜の乾燥・硬化はJIS2種タイプの方が速いです。
 いずれも成分中の鉛と植物油とが反応して鉛石けんを生成し、この分解生成物が腐食性因子を遮断する鉛の作用を利用したものになります。塗膜と被塗物表面の界面を微アルカリ性に保持し、酸化被膜の欠陥の補修を容易にするなどの防食効果があります。
 亜酸化鉛さび止めペイントは活性に富む亜酸化鉛(Pb2O)を含む塗料で、鉛系顔料に共通のさび止め機構のほかに次式のような反応を行い、これらの反応生成物が鉄面を腐食し難い状態に保持する作用を有するとされています。
 Pb2O + 1/2O2 → 2PbO
 Pb2O + H2O →Pb(OH)2 + Pb
 塩基性クロム酸鉛さび止めはPbO・PbCrO4の組成を有するもので鉛系さび止め顔料に共通のさび止め機構による防食効果を発揮します。クロム酸とPbOの比率によりある程度性質が異なります。
 シアナミド鉛さび止めペイントはPbCN2の組成を有する含量を含む塗料で、第二次大戦中鉛資源節約のためドイツで開発されたものになります。鉛系さび止め共通のさび止め機構のほかにアンモニアを遊離して鉄面をアルカリに保持します。我が国では昭和30年代に使用が開始されましたが、鋼構造物のさび止め塗装などに用いられています。
 鉛丹ペイントは鉛丹(Pb3O4)をさび止め顔料の主成分としますが多少PbOを含んでいます。鋼構造物用さび止めペイントとして最も長い実績を有します。さび止め機構は先に述べた鉛系共通の機構によります。鉛丹ペイントは防食性能は優れますが、塗膜の乾燥と硬化が遅いという欠点を有します。したがって、屋外の塗替え塗装のように、速やかに塗膜としての機能を発揮する必要がある用途には不向きです。しかし、橋梁、鉄骨など新設鋼構造物の塗装に用いられています。
 また、主として亜鉛めっき面用に用いられるものとして鉛酸カルシウムさび止めペイントがあります。
 近年に実施されてJISの統廃合により、環境への負荷の高い製品のJIS廃止(JIS K 5622、JIS K 5624)が行われ、暫定継続規格とされた規格(JIS K 5623、JIS K 5625、 JIS K 5629)も、製品動向を調査し、廃止、継続、あるいは問題点を解決した規格への修正などが行われる予定です。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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耐熱塗料(heat resisting paint)




 耐熱塗料は、100℃以上の高温にさらされる場所に塗られ、被塗物の防食、美観などの機能を果たす塗料であります。したがって、塗膜は高温に耐え、かつ使用環境にあっても変色がなく、防錆力、耐候性も優れていなければなりません。
 耐熱塗料は宇宙開発や家電などの進歩につれて、性能のよい塗料が要求されるようになりました。また、耐熱性の合成樹脂も開発されました。その代表的なものにはポリアリルシロキサン、ポリイミド、ポリフェニルオキサイド、ポリパラキシレン、ポリフェニレンなどありますが、シリコーン樹脂、ふっ素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、エチルセルロース、アルキッド樹脂なども用いられます。
 現在、市販されている耐熱塗料は、150℃まで耐えられるものはアルキッド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が用いられ、150℃以上のものはエポキシ樹脂、アルキッド変性シリコーン樹脂、シリコーン樹脂、ふっ素樹脂などを使用しています。

JISハンドブック 30 塗料 (30;2020)


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タールエポキシ樹脂塗料(tar epoxy resin coating)




 エポキシ樹脂にコールタール、ビチューメン(瀝青質)などと硬化剤を原料とした塗料です。旧JIS K 5664:2002「タールエポキシ樹脂塗料」では、その種類を次のように分けています。
 1種:耐油性・耐薬品性が優れているもの。
 2種:耐油性・耐薬品性をもっているもの。
 3種:耐油性・耐薬品性を必要としないところに用いるもの。
 中でも1種タイプはすぐれた耐水性や対塩水性もあるため、海洋構造物の没水部を中心に広く使用されてきました。極めて防食性が優れ、厚塗りが可能であるため、高度の防食性能と耐久性が必要な箇所や、塗り替え塗装の困難が伴う箇所などに用いられます。他の合成樹脂系塗料と比較して素地への浸透性が良く、不安定な素地調整面への適用性がやや良いです。この塗料は防錆顔料が配合されておらず、防食効果はもっぱら塗膜の環境遮断機能によるものであるので、塗装に当たっては必要な塗膜厚を確保してピンホールのないように施工することが非常に重要です。タールエポキシ樹脂塗料には、次のような使用上に制約・留意点があります。
 ①色が黒と茶褐色に限定される。
  美装仕上げを目的に一般の上塗り塗料を塗り重ねると、タールが表面ににじみ出る(ブリード)
 現象を生じます。
 ②低温下では硬化しにくい
  一般のものは、10℃以下で硬化反応が進みにくいため、低温時にはイソシアネート系硬化剤を用いた
 タイプのものが使用されます。
 タールには発がん性の懸念がある物質を含んでおり、2009年にJIS K 5664は廃止されました。しかし安全衛生性を考慮して、コールタールそのものは使用せずビチューメンとして特殊膨潤端を用いたタールエポキシ樹脂塗料もあります。

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