《耐チッピング性と中塗り》
北米、北欧では冬期に道路凍結防止を目的として大量の岩塩、砂利が散布されます。其所を高速走行する自動車は、車が跳ね上げた砂利などを車体の前部に高速で受け止め、塗膜剥離やさびが発生します。これをチッピングといいます。良好な耐チッピング性を保つには、塗装系のどこかの層で石の衝突エネルギーを吸収・拡散させる必要があり、その塗膜物性は高伸び率、高破断仕事量形が必要になります。電着塗膜は防せい性、上塗りは光沢、耐候性、耐汚染性を専心追求する結果、剛直で伸び率の低い(3~5%)塗膜になってしまいました。したがって、耐チッピング性は中塗りでカバーせざるを得なくなってしまいます。-20℃~-30℃の低温域で石の衝突エネルギーを吸収・拡散するためには、中塗塗膜の物性は極めて軟質にする必要があり、その結果上塗り仕上がり性が低下するという問題がありました。そこでチッピングのダメージを受けやすい部位のみに軟質・高物性の耐チッピングプライマーを塗装し、次いで中塗りを塗装することで耐チッピング性と高仕上がり性を両立させる工程が考えられています。《不凍型耐チッピングプライマー》
従来のポリエステル/メラミン樹脂系の塗膜の伸び率は20℃では50~100%の値を示しますが、-20℃の低温ではわずか数%の値となり、塗膜は硬く脆い凍結した状態になっています。このような状況ではチッピングによる衝突エネルギーは直接鋼板に達し、大きな傷跡になってしまいます。新たに開発された不凍型耐チッピングプライマーは、-20℃においても約300%の伸び率があり、低温チッピングにおける衝突エネルギーをプライマーの層内で吸収するため良好な耐チッピング性を示します。