現在市場で一般に使用されているカチオン電着塗料は焼付乾燥条件として170~180℃✕20~30分になります。種々の改善要求の一つに焼付条件の緩和があります。これは省エネルギー、焼付け時に発生するやに・すす成分の減量(ランニングコストの低減、環境問題等)などに対する要求、また昇温の遅い被塗物での乾燥性と性能の確保等になります。今のところ、120~140℃✕20分程度の焼付条件に適合できるものまで開発されてきています。自動車ボディーに使用している鋼板に焼付硬化(BH)型ハイテン鋼があるため、当面は部品や厚板物などに使用が限られると考えられます。
低温硬化の考え方をまとめると、エポキシ樹脂を基体樹脂としたウレタン硬化型が主流であり、基本的には通常カチオン電着塗料と同じ方向のものでありますが、高架橋性を得るために特殊な材料を導入し、またその他触媒の選択、使用法等を改善し、低温硬化でありながら、十分な浴安定性、十分な仕上がり性を得ています。低温硬化型カチオン電着塗料は電着塗膜の焼付時間と焼付温度の関係が、通常型電着塗料の焼付範囲と比較して、温度も低く時間も短くて硬化します。また、もう一つの特長として、加熱減量が少ないことが挙げられます。これは電着塗膜を炉内で焼付けた際に、炉内で揮発して飛散する塗膜成分が少ないことを意味します。加熱減量が多いということは焼付炉内を汚したり、大気汚染の原因となるものであり、また、塗料使用量のランニングコストが高くつくことにつながります。しかも品質は通常型カチオン電着塗料に劣りません。以上記したように低温硬化型カチオン電着塗料は実用されてきています。