うるし・エマルション塗料も含め10種類の典型的塗料を組み合わせ、それら塗装系の層間剥離を各種付着試験法を用いて調べた結果があります。層間剥離の傾向は次の通りのようでありました。
層間剥離を起こさない塗装系
▽ウレタン・ビニル・エポキシ/ポリエステル系
▽ウレタン/アミノアルキド系
▽エポキシ/アルキド系
▽ビニル・アルキド/エポキシ系
層間剥離を起こす塗装系
▽エマルション/ウレタン系
▽ニトロセルロースラッカー/ビニル
▽ビニル/ニトロセルロースラッカー系
塗膜物性(特に吸水膨潤度)が著しく相異する組み合わせは、層間剥離を起こしやすいと考えられますが、実際には層間剥離と関係はありませんでした。たとえば、塗膜の吸水膨潤度に大差のあるエポキシ(1.70%)とポリエステル(7.10%)はよく付着するのに、近似するビニルと(4.40%)とニトロセルロースラッカー(5.95%)は特に層間剥離を起こしやすいのです。
ニトロセルロースラッカーとビニル樹脂塗料ともに溶液形塗料であるから、ビヒクルポリマーの相互拡散により層間剥離が起きないと考えられますが、結果は最も剥離する部類に属しました。このような現象はニトロセルロースとビニル樹脂との相溶性に起因すると考え、ニトロセルロースと相溶するアクリルラッカーAと相溶性に乏しいアクリルラッカーBについて実験されました。しかしながら、相溶性に乏しいといっても、塗料工業における通常の相溶性テストでは評価できない程度で、ニトロセルロース/アクリル樹脂混合塗膜の力学的損失(tanδ)あるいは弾性率の温度依存から相溶性に乏しいことが推察できる程度です。このように相溶性のよくない塗料はたとえ溶液形塗料同士でも層間剥離が起こるのです。