住宅外装用途では、プレコート鋼板には長期の耐久性が要求されます。特に近年では、各住宅メーカーも長期優良住宅認定制度などを背景に、長期保証に耐えうる設計やメンテナンスプログラムを明確に示すことで、数世代にわたって長く住める住宅であることをPRしています。このような住宅メーカーの取り組みに対応すべく、建材用プレコート鋼板もその耐久性を向上させてきました。特に基材となる表面処理鋼板は大きく進化してきました。
建材用プレコート鋼板の需要が低迷する中で、ガルバリウム鋼板を基材としたプレコート鋼板の生産量は大きく伸びてきました。近年では金属製屋根・壁のガルバリウム鋼板比率は85%を超えています。これはガルバリウム鋼板の高い耐食性が広く認知されるようになったこと、溶融亜鉛めっき鋼板各社が市場参入したころで供給量も増えて価格が下がり、コストパフォーマンスが大きく向上したためです。
ガルバリウム鋼板を基材としたプレコートは、腐食の初期に切断端面部からの塗膜の膨れが大きくなることが当初は問題視されていましたが、年数が経過すると塗膜膨れの進行速度が遅くなり、長期では溶融亜鉛めっきを基材とするプレコート鋼板よりも耐食性に優れることが実証されています。一方、ガルバリウム鋼板のめっき組成に2%のマグネシウムを添加することで、ガルバリウム鋼板の3倍以上の未塗装時の耐食性を実現した溶融合金亜鉛めっき鋼板(エスジーエル)が2013年に上市されています。
ガルバリウム鋼板は、一般環境下では初期は亜鉛リッチ層による防錆効果(犠牲防食作用及び腐食生成物の保護作用)が働き、長期ではアルミニウムの腐食生成物が、溶出した亜鉛リッチ層を充填(自己修復作用)し、高い耐食性を発揮します。しかしながら、海岸至近の軒下部のように厳しい腐食環境においては、早期に亜鉛リッチ層の溶出が起こり、アルミニウムの自己修復作用が不十分な状態で腐食が進行してしまいます。一方、エスジーエルはマグネシウムの効果により亜鉛の腐食生成物がより緻密で保護効果の高い皮膜を形成するため、亜鉛リッチ層の溶出が抑えられ、厳しい腐食環境においても高い耐食性を示します。
このように住宅の立地や部位による腐食環境の違いに応じて、基材を適切に選定することで、要求にマッチしたプレコート鋼板の耐久性を得ることが可能です。