《収縮応力の低下》
高分子に
可塑剤を混合すると付着性が向上することがありますが、これは、塗膜のぜい性を緩和して、内部ひずみを低下させ、あるいは極性分子の被塗面への配列を容易にさせるためであるといいます。例えば、ニトロセルロースにしょう脳を添加した場合、しょう脳添加量の増加に伴って収縮応力が減少し、付着強度が増大します。ニトロセルロースやアミノ樹脂に対する油変性アルキド樹脂、エポキシ樹脂に対するポリアミド樹脂の添加は、いずれも塗膜のぜい性の緩和と付着性の改善のためで、粘弾性的には、これら高分子可塑剤と考えてよいのです。
《可塑剤添加量には最適値がある》
しかし、
可塑剤の添加量が多すぎると塗膜を軟化させて、かえって付着性は低下します。例えば、アドヘロメーターで測定したときのアルミニウムに対するラッカーの付着性に及ぼすジブチルフタレート(DBP)の影響についてですが、ニトロセルロース、エチルセルロースいずれの場合にも、DBP量が10~15%のときに付着量が最大になり、それ以上に添加量が増すと、かえって付着量が減少します。
《可塑剤と相溶性》
また、相溶性の悪い
可塑剤を混合すると、付着性が損なわれてしまいます。下表はニトロセルロースに付着強度に対する可塑剤効果を示したものになります。しょう脳は理想的な
可塑剤で、付着に良い効果を及ぼし、トリクレジルホスフェート(TCP)は相溶性のよい
可塑剤ではありますが、しょう脳には及んでいません。ひまし油は相溶性がなく、単に微粒子分散するだけの軟化剤で、付着界面に浸出して付着を阻害する傾向があります。
表.ニトロセルロース/可塑剤系塗膜のジュラルミンへの付着強度添加量 | しょう脳 | TCP | ひまし油 |
0% | 14kg/㎝^2 | 14kg/㎝^2 | 14kg/㎝^2 |
20% | 61kg/㎝^2 | 14kg/㎝^2 | 14kg/㎝^2 |
40% | 109kg/㎝^2 | 17kg/㎝^2 | 3kg/㎝^2 |
60% | 104kg/㎝^2 | 61kg/㎝^2 | 13kg/㎝^2 |