塗料の焼き付け温度を高くしてしまうと、ガラス転移点が上昇しますので、内部応力も高くなり、付着性にとってはよくありません。早く乾燥する塗料は付着が悪い、また、一度に厚塗りすると剥がれやすい、あるいは硬い塗膜にすると付着性が悪くなるなど、付着に関係する経験的な事実は多いです。油性系塗料は一般に、ゆっくり硬化する塗料ですから、経時によるガラス転移点の上昇は緩やかとなります。
そのため発生する内部応力が緩和されながら乾燥していくため、内部応力は小さくなって付着性は良好となります。一方、紫外線硬化型樹脂塗料のように瞬時に硬化する塗料は内部応力を緩和する余裕がなく、ガラス転移点が室温以上になるので大きな内部応力が発生して付着力が低下します。
内部応力の大きい塗料の厚塗りは致命的な欠陥をもたらしてしまいます。厚塗りすれば、当然のことながら塗料の初期体積は大きくなり、収縮率は一定であっても内部ひずみの絶対値が大きくなり、塗膜の剥がれまたは割れの現象を引き起こしてしまいます。