塗膜の曝露、特に高温高湿下に放置すると著しく付着性が低下します。例えば、付着性の良好なエポキシ樹脂や熱硬化性アクリル樹脂塗料でも水分による付着性の低下は顕著に認められます(その一方で、漆器類を水中に入れておいても漆は耐湿性に優れることから、付着性の低下は起こりません)。これは水分子が塗膜中に拡散、これを膨潤しさらに浸透して塗膜-素地界面に凝集し、付着活性点を失活させるためであると考えられています。一般に塗膜の付着性の経時変化は、”付着とは水との戦いであり、付着力の保持は内部応力との争いである。”と言われています。
塗料界において、我々がユーザーより要望される塗膜物性の規格には、耐水、耐湿および塩水噴霧試験など水に関係する試験後の2次付着性の維持が必ず指定されます。
塗料技術者は、各塗装工程に使用する塗膜のガラス転移温度、橋かけ密度の調節、カップリング剤などの添加による耐湿性の向上、内部応力の緩和、透湿性に対する下塗りのフィラー充填効果など、いろいろな技術手法を組み合わせ対応しています。