塗膜の付着力にあっては、阻害要因である内部応力の寄与が大きいと言われています。言い換えれば、塗膜の付着技術は阻害要因の抑制技術と言うことが出来ます。
塗装鋼板を屋外に放置した場合を考えると、塗膜は昼夜の温度、湿度の日間変動、晴雨の湿度変化環境にさらされることになります。乾-湿サイクル下では、塗膜は吸湿、乾燥による体積ゆがみを生じ、内部応力が発生します。この応力が無視できないことを示したのが、塗装鋼板の付着力と塗膜の吸水量および応力緩和速度の関係です。応力緩和能力に優れ、吸水量の少ない塗膜ほど付着力の低下度合いが小さい傾向があります。すなわち、発生した吸水ゆがみ応力が塗膜の応力緩和能力によって緩和され、付着力が保たれているということになります。
また、冷熱サイクルにあっては、鋼板と塗膜の線膨張係数が異なるために温度差ゆがみを発生し、その値は極端な場合には70kg/cm^2にも達します。吸水ゆがみ、温度差ゆがみは本質的に回避することは出来ず、発生する応力は塗膜の応力緩和性能により緩和される必要があります。すなわち、塗膜の付着力にとって塗膜の粘弾性的特性が極めて重要になります。