機械的下地処理の中で最も信頼度の高い方法はブラスト処理になります。これは、ショット、グリット、スラグ(鉱さい)等の研削材粒子を鋼材表面に投射することによって、付着物を除去して清浄にし、また、塗膜の付着に適した表面粗さを与える処理です。
回転する翼車の先端から研削材を投射する遠心投射式と圧縮空気を用いてノズルから研削材を噴射する方式とがあります。遠心投射式は高能率で、密閉式で粉塵の害を周囲に与えることはありませんが、大規模な設備が必要となり、かつ固定的なものになってしまいます。他方圧縮空気を用いてノズルから研削材を噴射する場合、設備が簡単で持ち運びも可能です。粉塵の害を避けるために、バキュウムブラスト、ウエットブラスト、ウォータージェット工法等もあります。
ブラスト処理の施工にあたっては、既定の除錆度を達成するとともに、表面粗さが過大にならないように注意しなくてはいけません。また、油脂類による汚染、研削材の砕片などが処理面に残らないようにする必要があります。
動力工具及び手工具による前処理はブラスト処理と比較して効果が不確実であり、能率も劣りますが、特別な設備を必要とせずに手軽に実施できるので、しばしば用いられます。動力工具には、チューブクリーナー、ディスクサンダー、ジェットタガネ、動力ブラシ等があります。一方手工具には、スクレーパー、細のみ、ワイヤーブラシ等があります。
この方法では、隅角部など処理し難い場所の完全な除錆は困難であり、ミルスケール(黒皮)の除去はほとんど不可能と言って差し支えないでしょう。したがって、この処理の上に塗装可能な塗料の種類は、ある程度制限されてしまいます。